『ブルーストッキングの女たち』

戦後日本の代表的劇作家の一人宮本研の最後の戯曲。
ブルーストッキングとは、雑誌『青鞜』の女性たちで、平塚らいてう、神近市子、さらに荒畑寒村らが出てくるが、中心は伊藤野枝。
彼女が九州から上京し、作家で尺八、バイオリン奏者でアナーキストの辻潤と同棲するところから始まる。

野枝は、宝塚出身の純名リサで、私はこの人の素直で真面目な演技が好きで、高く評価してきた。ここでも本来の役ではないと思うが、今回も良く演じていると思う。
野枝は辻と別れと言うか捨て、言うまでもなくアナーキスト・大杉栄と一緒になる。神近は大杉を葉山の日陰茶屋で刺す「日陰茶屋事件」を起こす。
この事件については、吉田喜重が1969年に映画『エロス+虐殺』でも題材としているが、制作時は、当事者の一人の神近氏がまだ存命中で、公開中止の訴訟も出された。

最後、大正12年の関東大震災の中、麹町憲兵隊長の甘粕大尉により大杉と野枝は殺されてしまう。
明治と昭和という戦争と動乱の時代にはさまれて平和な時代だった大正を良く描いた作品だと思う。
大杉が実はとても女性にやさしい、今日で言えば主夫のような男であるのがとても意外だった。
そうして多くの女性にもてたカッコ良さが、軍や警察の怒りを買い、惨殺されたのだろう。
それは、1970年代に南アフリカで白人政府により虐殺された黒人ジャーナリストのスティーンブン・ビコ(ピーター・ゲイブリエルの名曲『ビコ』である)と同様で、彼も白人女性に大変もてた男だったそうだ。

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