言うまでもなく人気劇作家三谷幸喜の脚本、そして初監督作品。
大晦日の高級ホテルに様々な人が出入りし、難問が起きるが、役所広司らホテルマンの知恵、機知、機転ですべては解決されてハッピーエンドになる、というもの。
一口にして言えば、「格差社会映画」である。
良く出来ているし、役者も豪華、セットも高級で、話は面白いが、どこか「いい気なもんだ」という気がしてしまう。
最後のメッセージは、人はそれぞれ自分らしく生きていくことが大事と言うものだが、そんなことをセレブたちに言われても困るね。
「有頂天なのは、ホテルではなく、三谷とフジテレビだけだろう。
そんなに浮かれているから、ホリエモンにニッポン放送を取られそうになったのだ」と言いたくなる。
私は、この映画の撮影にも使用されたヨコハマグランド・インターコンチネンタルホテルの株主であり、ホテル棟所有者のパシフィコ横浜にいたこともあるので、ホテルの内部も多少は知っている。
シティ・ホテルは、その地域のエリートらの集う場所だが、その舞台裏は、下層の人間の肉体労働の場である。
宴会の設営、配膳など、臨時、パート職員の職場であり、言ってみれば今日のワーキング・プアの場でもあるに違いない。
ホテルが、そうした低賃金労働に支えられているのは、日本だけではない。
海外はもっと極端で、私は昔、ニューヨークで横浜港のプロモーション・パーティーをやったことがある。
昭和天皇もお泊りになったウォルドルフ・アストリア・ホテル。
そこで、PR映画を上映し、横浜港を紹介し質疑応答をやる。
設営時、会場の机の配置が良くないので、ウェーターにその旨話し掛けようとした。
勿論、下手な英語だったが、彼は「英語は駄目、駄目」と手で合図した。
彼らは、ハイチから来ている連中で、スペイン語しか出来なかったのである。
アメリカの最高級のホテルで職員は外国人だった。
それが、アメリカ社会の格差だったが、今や日本も、日本人内部でそうなりつつあるのだろう。
撮影は、冒頭と最後の大ロビーはセットだが、横浜のインターコンチネンタルホテルが随分使用されているようだ。