説教エロとしてのワイド・ショー

昔、「説教エロ」というジャンルがあったことは、前にも書いた。
「こういうことはいけませんよ。やめましょう」と言いつつ、エロを表現するのだ。明治時代には、性病の薬屋だった有田ドラックの「衛生大博覧会」と言う見世物があり、全国を大人気で巡回したそうだが、要は性病に冒された裸体模型を見せて金を取るのだ。
日活ロマンポルノが出る前、日本ATGが制作していた大島渚、新藤兼人、篠田正浩、そして実相寺昭雄らの映画は、文芸エロというべきものであり、言わば説教エロの変種のようなものだった。だから、日本ATGは、ロマンポルノが出るとすぐに滅んだ。

さて現在、テレビのワイド・ショーで毎日放送されているニュース、芸能記事も、ほとんど説教エロである。
曰く、覚せい剤はいけません、合成麻薬を飲んで女とセックスするなんて破廉恥。
あるいは、某国立大生が、全裸で殺された。
結婚詐欺女は、1億円もの金を独身男性から巻き上げるなんてひどい、どういう神経なのか、等々。
これらは、当事者の不道徳性を批難しつつ、実は不道徳性を宣伝している。
それらを聞くと、まるで今の日本は、ソドムとゴモラのような腐敗・堕落した社会のように見えてくる。
だが、今の日本は、道徳的に堕落した社会だろうか、私にはそうは思えない。むしろ、道徳的な社会のように思える。

よく考えれば、昔にも日本三大毒婦というのがいたのだから、今と大して変わらない。
三大毒婦とは、高橋お伝、花井お梅、阿部定だが、すべて映画、演劇の主人公になっている。
話題の結婚詐欺女も劇や映画の主人公になるのだろうか。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする