『罪』

川崎・新百合丘の川崎市アートセンターのある新百合丘の辺境まで行き、アル・カンパニー、蓬莱竜太作・演出、平田満、井上加奈子主演の『罪』を見たが、面白くもなんともないものだった。
こんなつまらない劇に出ざるを得ない平田満に大いに同情した。

話は、知的障害の息子を持つ家族の旅行中の一夜だが、どこにも工夫もひねりもなく、漫然と物語が進行する。
そして、一応福祉の現場の経験のある私から見ても、この知的障害者を持つ家族の姿は、違うと思う。
多くの障害児・者を持つ家庭では、母親が子供の介護に没入し、父親は見向きもされなくなり、その結果、夫婦は離婚の危機を迎えることさえある。
その意味では、なんとも底が浅く、リサーチも考察も少ない、薄い脚本なのだ。

この程度で、蓬莱は岸田戯曲賞を受賞しているのだから、同賞の権威など、もうどこにも存在しないのだろう。

先日の岡田利規の劇もひどかったが、この蓬莱竜太の劇も全く感心できない。
レベルとしては、大学の演劇サークルの自作戯曲劇であろう。
同じ新進劇作家・演出家では、新国立劇場で三島由紀夫の『綾の鼓』を演出した前田司郎は若いのには、意外に正統的でましなように思えるが、この連中はひどいようだ。

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