大河内山荘

京都には、時代劇俳優大河内伝次郎が作った広大な山荘「大河内山荘」があり、観光名所としても知られているが、ここには一度だけ行ったことがある。
横浜市役所に入って最初の職場は、市会事務局で、正直に言って「随分と変わったところに入ったな」と思った。
だが、今となっては、世の中のことをといろいろと教えていただき、大変勉強になったと大いに感謝している。

市会事務局なので、市会議員の先生方の「お世話」は重要な仕事である。
その一つに、議員の行政視察の随行があった。
市会の各常任委員会は、当時年に2回づつ、指定市等他都市の行政の実態を視察・調査し、その結果を横浜市政に反映させる仕組みになっていた。
その事務の担当は、各常任委員会担当課の委員課の各担当書記で、彼が正・副委員長と相談し、視察都市、事業、施設等を計画し、委員会に諮って決める。
大抵は「委員長一任!」
の声が掛かって原案どおり実施することになる。

さて、実際に視察に行くとなると、業務的にはなかなか大変で、相手都市との交渉、日程の調整、新幹線の予約から、座席の配分まで、旅行代理店職員のように、担当書記の業務は極めて多い。
新幹線の座席決めも、実は大変で、党派毎に上手く割り当てないと、仲の良くない先生もいるので大変なことになる。だが、担当書記はそんなことは経験で十分に心得ているので大抵は問題なくできる。
それを補佐するのが、庶務課、議事課の若手職員で、担当書記の指示に従って色々と業務を手伝うが、私も職員時代に行政視察に何度か付き合った。

そして当日、新横浜駅から無事新幹線に乗れば一安心である。
初日、二日目は、全員一緒の団体行動だが、三日目になると、それぞれの党派に分かれての視察になり、自民党、社会党等の、2・3人づつ常任委員がいる会派は、担当書記か、各局から来ている幹部職員が付くことになる。
たまたま私は、3日目には一人だけになってしまった、民社党のある長老議員に付くことになった。
民間労組出身で、温厚な大変よい方だった。

予定の調査視察終了後、
「金は俺が出すから、京都市内を少し廻ろうじゃないか」と言われた。
観光タクシーで案内してもらったが、その一つが、大河内山荘だった。
当時、古い日本映画に今ほど興味はなかったので、特別の感慨はなかった。
よくは憶えていないが、山を背にした、ひどく大きな屋敷と庭だったこと、きちんとお茶が出たことを記憶している。
もう30年以上前のことである。

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