『トップガールズ』

ロンドンの人材派遣会社のOLマーリーンの寺島しのぶが役員になったお祝いパーティーに、女性が集まって来る。
だが、それはイザベラ・バード(麻美れい)、法王ヨハンナ(神野三鈴)、二条(小泉今日子)、グリゼルダ(鈴木杏)らの時間や国を越えた女性で、それぞれが自分勝手な話を言い合う。
まるで、テレビのトーク・ショーで、昔演出の鈴木祐美らがやっていた自転車キンクリートの公演について、私は劇評で「無駄なおしゃべり」と書いたが、これもそうで、このままでは堪らないと思う。
特にひどいのが、二条の小泉今日子で、これが話し出すと、劇が白けた。
以前から演技がうそ臭くて嫌いだったが、今回の劇を見て本当に嫌いになった。

このトーク・ショーは、1時間弱で終わり、今度はロンドンのオフィスになる。
寺島は、昇進を同僚の鈴木や小泉から祝福されるが、そこに彼女の代わりに降格された男の夫人(麻美れい)が乗り込んでくる。
だが、寺島は問題せずに夫人を撃退する。
その見事さは、偶然田舎から上京していた寺島の姪で少々知恵遅れの少女アンジーの渡辺えりから見ても、至極カッコいいものだった。

数週間後、田舎の故郷に寺島は戻り、姉のジョイス(麻美の三役)と会う。
二人は、すべてに食い違うが、寺島は、今回の自分の昇進のみならず、「1980年代のイギリスは輝ける時代になる」と言う。
なぜなら、イギリス初の女性首相サッチャーが、停滞した社会を変革してくれるからだと確信する。
田舎の貧困家庭を逃れ、寺島はロンドンに出た後、アメリカでも働き、キャリア・アップして階級社会のイギリスで昇進してきたのである。
常に労働党に投票している麻美との溝は埋まらない。

最後は意外な事実が明かされるのだが、ここには書かない。
イギリス病を克服したはずのサッチャーリズムも今は完全に否定され、現在彼女はアルツハイマーを病んでいるとのこと。
現実は、いつも皮肉で厳しいと言うべきか。

ここでも、寺島しのぶの上手さには麻美れいも負けた感じだった。麻美は、三役を上手く演じ分けているが、ときどき台詞を歌っていたのは気になった。
結局、幕開きの「トーク・ショー」はいらなかったのではないかと思った。
シアター・コクーン

帰りは、渋谷宮益坂の「エル・スール」に寄って店主の原田さんと話す。
3・11のときも、戦前にドイツ人が作ったこのビルは大変頑丈で、10階なのにあまり揺れなかったとのこと。店のCD等の棚も壁に金具で付けてあったので、全く無事だったとのこと。戦前にできた東京の高層ビルでは、あれが一番古いのだそうだが、来年には取り壊しとのこと。
昨年に出たアキレタ・ボーイズの、新しい復刻盤CD『楽しき南洋』を買って京浜蒲田に行き、格安のラジ・カセを買う。
ここも随分と商店が変わっていたが、一番汚くて安い焼き鳥やは昔と同じようにやっていたので入る。
ここには、小泉構造改革の波も押し寄せていないようだ。

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コメント

  1. ポルノ より:

    いや、
    麻実れいの方がやっぱり巧かったですよ。
    美人=下手とか宝塚=下手、脱ぐ女=上手いだとかというアホくさい観念つう偏見に些かとらわれ過ぎじゃないですかね。

  2. さすらい日乗 より:

    公平に見ているつもりですが
    ご批判はお受けしますが、小泉今日子は良くなかったと思う。西河克己も、「彼女は演技すると表情が死ぬ」と言っていました。
    麻美れいは、悪くなかったと思いますが、ときどき台詞を歌ってしまうのが気になりました。
    彼女については、2009年3月の『ストーン夫人のローマの春』についても書いていますので、それもお読みください。彼女については、宝塚の『ベル・バラ』以前から見ています。