K氏の先見の明

横浜市役所のK氏と言えば、行政職員で最高位まで行かれた方である。
彼が、随分前に、「原発は破綻したシステムなんだよ」と言っていたことがある。
私も同じ局にいて、よく会っていた30年以上前のことである。
そのときは、「やはり元左翼の言説だろう」と思っていた。
だが、今回の福島第一原発の事故を見ると、K氏の先見の明に驚かざるを得ない。

確かに原発の発電コストは安く、CO2の排出量も少ないのに違いない。
だが、今回の事故の大きな影響で見るように、特に日本では、社会的コストは異常に高く、原発の総コストは大変高いと言わざるをえない。

20年以上前に、イギリスで「ウォ-マッド・フェスティバル」を見て、主催者の事務局と話すため、イギリス西部のコーン・ウォールに行ったことがある。
行きは、プリマスまで飛行機だったが、帰りはイギリスが誇るディーゼル特急のインター・シティーでロンドンに戻った。
すると、ロンドンの近くに来て、明らかに原発が車窓から見えた。
一緒にいた田村光男に言うと、
「あれは原発に間違いないな」との答え。
広瀬隆など、「東京に原発を!」を叫ぶ人がいるが、まさにロンドン郊外に原発なのである。

このことを日本に戻ってある国際的なコンサルタントに話すと、
「結局、欧米では最後は金を保険で払って終わりとの考え方があるからねえ」とのこと。
それ以上の精神的補償は、「神の領域でしょうな」であると言う。

それも実に割り切った考え方だと思ったが、今回の被害のあまりのひどさを見ると、逆に精神的補償のしようもなく、「結局は金」というのも正しいかなと思う次第である。

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