『裸女の愁い』

1950年に東宝で公開された、日本初の本格的バレー映画だとのこと。
原作は芹沢光治郎で、それなりに良心的な展開になっている。
バレリーナの大滝愛子と姉でピアニスト花柳小菊の姉妹の戦後の物語。
芸者出の花柳がピアニストとはおかしいが、バレー団の指導者が藤田進なのだから、戦後的混乱がまだ続いていたのである。
戦時中は軍人だった藤田が、芸術家を演じるのだから信じがたい。

大滝愛子は、本当にバレリーナだったので、踊りは見られる。
小菊のピアニストぶりも結構きちんとしていて、さすがクラシックが趣味で、自分でバイオリンを弾いたという渡辺邦男である。
資産家の娘だった姉妹だが、因業なおじたちに財産を騙し取られる。
だが、二人はそれにめげず、芸術に生きてゆく。
その中で、生活のため、大滝は流行のストリップ劇場で踊ることになる。
と言っても、彼女は昔のセパレート水着程度になるだけだが、中では本物のジプシー・ローズが踊るシーンもある。
昔、日活ロマン・ポルノで『実録ジプシー・ローズ』があり、西村昭五郎監督、ひろみ摩耶主演で、坂本長利が彼女の振付師・正邦乙彦役で出てくるなど、かなり良いできだったと思うが、本物のジプシー・ローズが出ている映画があるとは知らなかった。
大変に貴重な映像である。

最後、藤田進も劇場に見に来て大滝愛子の真剣な踊りに感動して結ばれる。
衛星劇場

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コメント

  1. 弓子 より:

    裸女、踊る、、の文字で
    「生きる」で、志村喬が伊藤雄之助に案内されて
    ヌードダンスを見学するシーンを思い出しました。

    あのダンサーは黒澤監督自身がスカウトしたそうですが
    監督がダンサーを回りの男性陣とは、違う目で見てたのか
    同じ目で見てたのか気になるところです。

    志村喬が回りの人につられるかのように咆哮するシーンは
    真面目いっぽうに役所人生を過ごしてきたことを
    彷彿させる場面に感じました。

    「隠し砦の三悪人」 のお祭りの場面では
    日劇のダンサーが出演したそうですが

    この「生きる」のロケは、どこだったのでしょうか?

  2. 弓子 より:

    追伸、言葉不足で失礼しました。

    「生きる」のヌードダンスの場面
    ロケは(劇場は)どこだったのでしょうか?

  3. 『生きる』の劇場ですが、スタジオのセットだと思います。その前のキャバレーもセットで、200人とエキストラを入れすぎたためにセットの二重が抜けそうになったと言われています。

    黒澤映画というか、当時の映画は余ほどのことがない限り、すべてセットで撮ったものです。『天国と地獄』の伊勢佐木町も全部セットです。

    成瀬巳喜男の『流れる』の柳橋の路地もセットで、ある日成瀬監督が
    「路地の向こうをブルトーザーが横切るシーンが欲しい」と言い、実際にブルを載せたそうですが、道路を作っていた二重が壊れてしまい出来なかったと助監督がテレビで言っていました。

  4. 弓子 より:

    おこたえ下さり有難うございます。

    「天国と地獄」の伊勢佐木町の場面は
    てっきりロケかと思っていました。

    菅井きんさんの禁断症状の熱演が印象的でした。
    今でも、撲滅してないのですから恐ろしいことです。

  5. 菅井きんさんが出てくるのは、伊勢佐木町ではなく、黄金町で、ここは凄い美術ですが、勿論セットです。黒澤はトタンが好きなようで、山崎努が住む大岡川沿いのアパートの塀も黒のトタンです。
    黄金町のシーンには、常田富士男や富田恵子(草笛光子の妹で、当時は青年座の女優)なども出ています。
    そのようにワン・カットだけでも優れた俳優を選んでいるところが全盛期の黒澤映画の凄いところです。最盛期の日本映画の全体的な力ですが。

  6. 富田恵子は青年座ではなく、劇団新人会でした。