東映、笠原和夫脚本、舛田利雄監督の戦争映画の最後のもの。
3本の中では、高橋惠子が主演の『大日本帝国』が最上のできで、これはやや小粒の作品。
本来は、三船敏郎で「元寇」をやる予定だったのが、予算的に無理ということで、三船なら東郷平八郎で、日露戦争の日本海海戦になったとのこと。
この作品がユニークなのは、主人公沖田浩之が、軍楽隊員であり、トランペットを吹いていること。
彼は、一度除隊したが、再度志願して三笠に乗船することになるが、実際に三笠は軍楽隊を乗せていたようだ。
隊員には、宅間伸などがいて、隊長は伊東四朗、彼らと対立する砲術隊員が、佐藤浩一。
だが、佐藤はややお稚児さん趣味があり、女に金を使わずに貯めて、窯焚き人夫のガッツ・石松らに高利で貸している。
その他、戦闘中は甲板上でも、大小便自由だとか、二十日鼠を使って隊員の生死を占う等、元海兵団員だった笠原和夫らしい、実際の艦船の中の細かいエピソードが面白い。
沖田を追いかけて来る女郎が、三原順子先生である。
沖田・三原で3時間近い大作を持たせるのだから、笠原の脚本のすごさがよくわかる。
舛田利雄は、日活時代から音楽のセンスがよく、『紅の流れ星』で渡哲也が、クラブでジェンカを踊りだすシーンなどはワクワクしたものだ。
ここでも、ロシアとの開戦の前夜、甲板上で『新世界』の演奏が行われ、各自の故郷の映像が回想される。
これは、『砂の器』の加藤嘉と息子の日本中の放浪のダサさに比べれば、はるかに良い。
舛田は、なんでも作る娯楽映画監督として評価が低いが、大変優れた監督で、意外にも抒情的で、昔から好きであった。
全く評価されたことがないが、石原裕次郎の相手役を由実かおるがつとめた映画『夜のバラを消せ』なども大変良い作品だった。
最後、悪の権化の東野英治郎の愛人にされていた芦川いづみが、石原裕次郎を助けるために東野をピストルで殺し、自分も死ぬとき、
「私もこれで死ねる」という台詞のカッコよさにも感動した。
出航の前日、佐世保で首を吊って死んでしまう軍人は、誰かと思うと伊藤敏孝だった。
東映の『はだかっ子』や東宝の子役でよく出ていた人で、市川崑のATG作品にも出ていたが最近は見ないが、この作品あたりが最後だろうか。
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