『裸でだっこ』

大映末期のダイニチ映配時代、唯一の女性スター渥美マリの主演作品。
渥美、青山良彦ら貧しい若者が、自分たちの夢を叶えるため金儲けをたくらむ。
手っ取り早く金になるのは、言うまでもなく渥美を使った「美人局」で、大泉晃、平泉征らがその魔の手に落ちる。
渥美なら、その魔の手に是非落ちてみたいものだが。

だが、最後に青山が、彼と渥美のホテルでの情事を、実は特殊鏡の部屋を使って金を取って見せていたことが分かり、渥美は激怒する。
「夢のためとは言え金儲けだけを考えて、裸を見せるのは良くない」と言うのだ。
これは、渥美マリの裸を見せることだけで映画を作っている監督湯浅憲明他、スタッフ・キャストの自己批判なのだろうか。

実は、恋人の青山の他、渥美に惚れている若者に古今亭志ん朝がいて、彼は堅物の警官で、この渥美と志ん朝の関係はラブ・コメディでもある。
最後、志ん朝とセックスした渥美は、彼とも分かれ自立の道を向かうことを示唆して終わる。

脚本は、白坂衣志夫と安本完二、音楽が菊池俊輔で、モダンなセンスを目指しているのだが、大映東京なので、すべて泥臭くなる。
この辺は、日活、東宝等との大きな差である。
タイトル・シーンは、渥美らが参加のマラソン・ダンス・コンテストで、ジェーン・ホンダ主演の1930年代のマラソン・ダンス・コンテストを題材にした『ひとりぼっちの青春』をヒントにしたのだろう。

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