図書館の貸出は、出版不況の原因ではない

全国図書館大会で、出版社の代表から、「図書館の貸出が出版不況の原因であり、新刊本の貸出猶予制を求める」との声があったそうだ。

                                      

いまだにこんな泣き言を言っているのかと思ってしまうが、以下の四つの点で間違っている。

1 そもそも、日本人が、本や雑誌を買って読むようになったのは、そう古いことではなく、大体196年代からのことで、それまでは皆貸本屋から借りるか、友人同士で廻し読みしていた。

2 出版物の売れ行き不振の大きな原因は、以前は本、雑誌、週刊誌等をタダで置いてあった食堂、喫茶店、飲食店などの減少が大きな要素である。

  今どきの喫茶店、ファミ・レス、飲食店には本や雑誌、新聞はまず置いていない。それが、若者をスマ・フォでの情報収集にさらに掻き立てている。

3 新刊本の一定期間の貸出猶予は、映画や音楽の新公開時の、ビデオ、DVD、CD等の貸出猶予制からきていると思う。

 だが、映像や音楽のように、発売されたら短期間で収益を確保するものと、本、雑誌は本質的に異なるはずである。それとも、本も、映像のようにより「消費財」的性格のメディアにしようというのだろうか。

4 さらに、欧州の一部で行われている公的補助「公貸権」についても、欧州と日本では全く文化的事情が異なることを無視している。欧州では、一般的に文化、芸術は共通の基盤がある。だから、ドイツの人間がフランスの交響楽団の演奏を聴くこともでき、イギリスの演劇をイタリアの観客が見ることも可能だ。だから、欧州各国は、自国文化や芸術の保護のために様々な施策、公的補助も行っている。

だが、極東にあることと日本語という障壁に守られて、日本の文化が他の国、例えば韓国や中国に席捲されるようなことがあるだろうか。

絶対にあり得ず、「公貸権」は無用の論議であるというほかはない。

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