強い風の中、湘南新宿ラインで横浜から阿佐ヶ谷に行き、モーニングショーを見る。
坂本頼光の活弁、宮澤やすみの三味線で2本のサイレント映画『海援隊快撃』『天保泥絵草紙』を見る。
『海援隊快撃』は、言うまでもなく坂本竜馬で、月形龍之介が主演した朝日映画聯盟の作品、監督は志波西果という方。
名前は聞いたことがあるが、作品を見るのは初めて。
終了後の坂本の話では、朝日映画聯盟は月形と志波が作った独立プロだったが、これともう1本しか作品はないそうで、理由は、志波が主演女優の桜井京子と駆け落ちしてしまったからとは笑える。
作品としては、坂本竜馬の勝海舟との出会いによって攘夷派から開国、さらに薩長連合への道を開くが、近江屋で殺された短い生涯を描くもの。
月形龍之介が二枚目だったことがよくわかり、殺陣もすごいが、ただ回転数が当時の18コマではなく、フィルムセンター版なので、24コマ上映なので、動きが早くなってしまっているとのこと。それに合わせるのには、非常な苦労があるらしい。
坂本は、サイレント作品の収集もしており、某コレクターから膨大なフィルム・リストを見せられ「1000万円!」と言われたことがあるそうだが、勿論購入せず。
別にオークションで入手したという、この作品の別版もビデオ上映されたが、そこには脚本に伊藤大輔の名、撮影に山崎一雄の名も見えた。
客席にいた牧田尚さんからは、「このフィルムを持っていますよ!」とのお言葉もあり、大いに驚く。
この別版は、画面も音もひどいのだが、牧田さんのお言葉では、上映会の映像を撮影したDVDだろうとのこと。
「へえー、そんなやり方があるのか」と思ったのだが、実はこの夜の帰り、横浜市内の古本屋で同じく月形龍之介のDVDを買ったのだが、それもひどい映像なので、これも上映会撮影ものだったと分かった。
世の中には、いろいろなことがあるものだと思う。
もう1本の『天保泥絵草紙』は、天保水滸伝の河内山宗春を描くもので、意外にも筋は、黙阿弥の劇に忠実なものだった。
帝国キネマは粗製乱造と言われ、『何が彼女をそうさせたか』のみが名作とのことだが、結構きちんと作られていることが分かった。