森友学園問題で、安倍晋三首相は、「会計検査院に任すだけだ」と言っているが、私も会計検査院の検査を受けたことがある。
港湾の財産担当の時は、運輸省の監査、磯子区役所にいたときは、神奈川県の監査も受けたが、どちらも「楽な」ものであった。
運輸省の監査などは、あまり大きな声では言えないが、あらかじめ指摘されるような問題の個所を作っておき、夕方の講評の時にきちんとご指摘していただき、夜は中華街で懇親会というものだった。
こうした中で、一番手ごわかったのは、会計検査院の検査だった。
会計検査院は運輸省のようなことはなく、昼食も持参の弁当を会議室で取るというまじめさで、「さすが会計検査院と」感心したものである。
だが、指摘事項が見つからず、彼らは最後、大さん橋の入口のレストラン等に目を付けた。
ここはなんと国有地なのであり、国有地に民間のレストランがあるのは何事だと思ったのだ。
だが、これには歴史的経緯があり、1923年の関東大震災の後、東京港が開港され、横浜港は不要になると危惧された。その時、横浜市は、横浜港を早期に再建するため、国に要望して横浜は官民一体となり、横浜市から大さん橋と新興ふ頭の建設費用の25%を負担したのである。
そこで、戦後横浜市が港湾管理者になったとき、この25%の負担分を考慮して、大さん橋地区の国有地の管理を横浜市に任せ、賃貸料を取っても良いとした。
もちろん、横浜市はさらに国に賃貸料を払うのだが、これを「国有転貸事業」というのである。いわば、ピンはねだが、これによって当時約5,000万円くらい横浜市は利益を得ていたが、問題のない制度だったのである。
最終日に、会計検査院の担当者2人は、「あのレストランは何ですか」ときた。
そこで、私たちは「国有転貸事業」に対しての運輸省からの通達を見せた。
彼らは、「あれっ!」という顔をしていたが、一応納得してお帰りになった。
その後、特に問題点のご指摘もなく、会計検査院の検査は無事終了した。
この横浜市の25%負担分については、その後のみなとみらい開発の中で、国有地の横浜市の取得の中で考慮されたはずである。