近所にツタヤの大きな店が出来たので、先日行くと鈴木清順の『悪太郎』があったので、借りてきた。
原作今東光 脚本笠原良三 美術木村威夫 監督は鈴木清順である。
彼の日活時代のは、半分くらいは見ているが、これは見ていなかった。
話は大正初期の不良文学少年・今東光の自伝で、と言っても今東光自体がもう有名ではないかもしれないが、昭和初期の文学者で不良少年。後に関西で坊主になり、大衆小説を書いた。
今村昌平の監督第一作『盗まれた欲情』も彼の原作である。河内に住み、関西の大衆を主人公とした泥臭い小説を多数書き、テレビにも出て毒舌家として有名で、参議院議員もやった。日活の『河内カルメン』や『河内ぞろ』シリーズも彼の原作である。加賀まり子の有名な台詞「ハゲと股引をはいている人は嫌い」と言ったのは、今との対談であった。初代文化庁長官の文芸評論家・今日海は実弟。
鈴木清順の映画としては、余り面白くなくやや中途半端な感じがある。それは主演の山内賢の性格によるものだろう。相手役は当時美少女だった和泉雅子。それに田代みどりが助演。
この二人も、吉永小百合・浜田光夫のごときコンビだったが、少し線が細く暗い感じがあった。
和泉のコンビとしては、高橋英樹との『男の紋章』シリーズの方が良かったかもしれない。
この『悪太郎』の戦前の不良少年路線は、後に『けんかえれじい』として結実する。
和泉雅子は、後に南極に行くほど健康だったのに、何故かこの映画でも若くして病死し、舟木一夫との大ヒット映画『絶唱』でも結核で死ぬという不健康な役ばかりをやっていた。