東京都知事石原慎太郎の言動は、いつもきわめて粗暴で下品である。
これは、なぜなのか。
彼と、弟裕次郎の父は外航船の船長であった。
そうした人間の息子が、なんであのように品のない物言いをするのか。
作家佐野真一氏の『てっぺん野郎』によれば、彼ら兄弟の父親は確かに外航船会社山下汽船の社員であり、船長もつとめたようだ。
だが、山下汽船は、日本郵船や商船三井のような外航客船の会社ではなく、不定期の貨物船会社だった。
上品でスマートなマドロスの息子ではなかったのだ。
山下では、樺太、サハリンと北海道を結ぶ木材船の船長だったらしい。小林多喜二の『蟹工船』のような職場だったわけだ。
だから、こういう言い方をすると誤解を受けるかもしれないが、石原慎太郎・裕次郎の父は、石原裕次郎が演じたようなスマートな正義の味方ではなかった。
むしろ裕次郎の敵役だつた安部徹や松本染升らが演じたような卑怯な、あるいは粗暴な男に近い人間だったかもしれない。
そう考えれば、慎太郎の下品さもよく理解できる。
ああいう人間を長い間首長としているのは、どこかおかしいのではないか。
勿論、小説家、芸術家なら、どんな人間でも作品さえ良いならいい訳だが、自治体の長は社会的立場の高い人なのだ。常識や品が求められるのは当然だ。