1961年、市川雷蔵の光源氏で作られた源氏物語。監督は森一生、脚本は八尋不二である。
新とついているのは、このすぐ前に長谷川一夫の主演で『源氏物語』が大映創立10周年映画として製作されているためだろう。
筋は、川口松太郎の小説に基づくもので、女同士の争い、嫉妬、欲望等が強く描かれていて、川口家の女性をめぐる争いを思わせる感もする。
言うまでもなく上層の家の出ではないが、帝(市川寿海)の寵愛を受けた桐壷(寿美花代)から生まれた源氏は、美しい男になり、モテモテ男の女性遍歴。
桐壷は死んでしまい、帝は彼女に似た藤壺(寿美二役)を寵愛するが、亡き母の面影を求め、源氏も強く愛してしまう。
要は、究極のマザー・コンプレックスであり、オイディプスだが、源氏は目を潰すことはないのが、ギリシャと日本の物語の差というべきだろうか。
女性はいろいろと面白く、東宮を産んだのに帝の愛が消えてしまいヒステリーの弘徽殿の女御の水戸光子とその兄が仙田是也で、いつもの悪役。
その息子は東の中将の川崎敬三。
源氏は、葵の上の若尾文子と結婚するが(この時代のことを結婚と言って良いのか疑問はあるが)、互いに打解けず、源氏は女性漁りに精を出す。
中では六条御息所の中田康子と末摘花の水谷好重は個性を見せ、また弘徽殿の女御の娘だが奔放で、源氏と遊びを起こす朧の君の中村玉緒が一番現代的で面白い。
最後は、その所業がばれて帝(寿海の退位の後の新帝)から注意を受けた源氏は、都を去り、明石へと向かうところでエンド。
音楽は斎藤一郎だが、ところどころで女性のアリアが入るのは、伊福部昭の作品にありよく似ていると思えたが、どの映画か思い出せない。