いつから食事の前に合掌するようになったのだろうか

近年、非常に気になるのは、食事の前、「いただきます」と同時に手を合わせて合掌することである。
私は、1948年に東京大田区に生まれ、父は小学校校長で、5人兄弟の末っ子で、特に厳しくもいい加減でもない躾で育ったが、こんな仕草を強制されたことはない。
皆、「いただきます」と言い、静かに食べ始めるものだった。
小中の給食の時間でも、一斉に「いただきます」とは言っても、手を合わすことはなかったと思う。
1950年代の小津安二郎や成瀬巳喜男の庶民映画を見ても、そうしたものだった。
あるいは、『兵隊ヤクザ』や『網走番外地』などの軍隊や刑務所のシーンでも、合掌はなかったように思う。
それが、現在ではテレビ、映画、芝居の食事のシーンでは、必ず手を合わせ、中には両手の親指と人差し指の間に箸を水平に挟むと言った念の入ったやり方もある。それが、あたかも常識のようにされている。
そうだろうか。
私が、この不思議な仕草をする人を最初に見たのは、たぶん2001年のことだったと思う。
当時、私はパシフィコ横浜にいて、昼はホテルの社員食堂でとっていた。
その時、別の外郭団体の人が、この仕草をして驚いたのである。
その方は、関西の出身の方だったので、「ああ、関西ではこうするのか」と思ったものだ。
関西では、浄土真宗などの影響が強いので、起きた仕草なのではないかと思っている。

なぜこんなことを書くかと言えば、昨日民芸の『新・正午浅草 荷風小伝』を見たからだ。
昭和32年ごろ、元愛人のお歌が市川の荷風の家にやってくる。そこで、二人は釜飯を食べる。荷風はただ食べるが、歌は「いただきます」と言い、合掌して食べるのだ。歌は、元芸者で、東京生まれだったはずなので、これはおかしいと感じたのだ。
劇は、非常に良かったのだが、このシーンだけがまずかったのだ。

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