『東京物語』の異物

『東京物語』と言えば、世界映画史に残る小津安二郎の名作で、尾道にいる父親笠智衆と母の東山千栄子が、長男山村聡と長女杉村春子のいる東京に出て来た、いつには東山は死んでしまう話である。
普通、この映画は、笠・東山らの父親と、山村聡、杉村春子、三男で大阪にいる大坂志郎、二女で尾道に両親と一緒に住んでいる二女香川京子、さらに戦死した二男の嫁原節子らとの世代とのことを描いた作品とされている。
笠は70歳、東山は67歳、山村は50、一番下の香川が23とされているので、両親は戦前派、子供たちは戦中派とされていることが分かる。
そして、東京に来ても、子供たちは1950年代から始まった経済の復興の中で仕事に忙しく、ろくに両親の面倒をみることができない。
唯一、比較的自由な未亡人の原節子が、二人の相手ができるという皮肉な筋書きになっている。
そして、この中で、戦前派でも、戦中派でもない連中のことが、異物のように描かれていることに気がついた。
両親が行く熱海の宿で、多分会社の団体旅行で大騒ぎしている若者たちと、東京に戻った笠が、尾道の友人十朱久雄の店を訪ねるところである。
十朱は、店の二階を下宿に貸していて、学生がいるが、麻雀とパチンコばかりで、ろくに法学の勉強などしていないと言われている。
この連中は、明らかに戦後世代の若者であり、この映画の翌年には、石原慎太郎の小説『太陽の季節』によって、日本の社会に出てくるのである。
『東京物語』では、ほとんど異物のように見えるが、その後日本映画界全体を覆い、ついには3年後の『東京暮色』では、主人公になるのである。

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