『愛と悲しみ』

結婚していながら自由奔放に生きる美人の姉・岡田まり子(字が出ない)と、真面目でおとなしい妹・倍賞千恵子との間で揺れる医学生津川雅彦の恋。

夫・山内明との離婚協議に、北海道まで岡田に同行した津川は、その帰り十和田湖の旅館で岡田と出来てしまう。
成瀬巳喜男の名作『乱れ雲』で、加山雄三と司葉子は、最後まで行きそうになるが結局出来ないが、ここでは当然のごとく簡単にできてしまう。

ところが、倍賞らが住む伊豆三島に残してきた岡田の娘が、日本脳炎にかかり入院していた。
まるで、津川と岡田の不貞が娘の病の原因であったように二人は悩み、周囲も非難する。
最後、岡田は伊豆の海岸で自殺し、その罪を悔いた津川は、最初の志のとおり、シュバイツアー博士のごとく、僻地医療に身を捧げる。
シュバイツアー博士というのが、笑わせる。当時は、無批判に賛美されていたのだ。
実にご都合主義的な話だが、監督大庭秀雄の丁寧な演出が最後まで見せる。
ラブ・シーンのカット割りと主人公たちの感情の変化の表現が極めて細かく、上手く描かれている。少しも嫌らしさがなく、ご清潔。

子供が日本脳炎になって、という件は原作者の壇一雄が、自由奔放に多くの女と日本中を放浪していたとき、息子が練馬で脳炎になり、下半身不随となったことからきているのだろう。一種の贖罪である。
最後には岡田を自死させるところに明白。

1962年の作品で、すでに太陽族も松竹ヌーベル・バークの後だが、そんなこととは無関係な純朴な恋愛映画。早川保も農村青年として出てくるが、余り劇絡まない。
性道徳が、日本映画で根本的に変わるのは、日活ロマンポルノ以降なのである。

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