『ダブル・クラッチ』

原作は五木寛之だが、多分題名をもらっただけで、ジェームス・三木のオリジナルらしい。

1978年監督は山根成之で、郷ひろみと松坂慶子が、両親がいなくなった貧しい弟と姉を演じる。

舞台は、川崎で住んでいるところは、京浜急行大師線沿線のようだ。

話は、郷が川崎駅前の自動車教習所で仮免の試験に落ちるところから始まる。

教官は言う、「君はスピードの出しすぎ乱暴でダメ、相当に無免許で運転しているな・・・」

予備校生なのだが、ろくに学校には行っていず、姉に頼って生きている。二人が住むアパートが青雲荘というのが笑える。

松坂は、昼は大師線の駅の売店、夜はキャバレーで働き、金を貯めて店を持とうとしている。駅員で松坂に手を出そうとするのが石橋蓮司で、彼が松坂のキャバレーのバイトを京急に密告したと誤解して郷は、石橋を暴行して逮捕される。

その時、松坂の高校の先生で店にも来ていた地井武男が、釈放に努めてくれ、ついには彼の助力で松坂はバーを持ち、郷もバーテンで働く。

ある日、地井は、郷を車でドライブに誘う。スバル・レオーネで、信州に行くが、なんと意外にも地井は、A級ライセンス保持者だった。

信州の未舗装の山道をドライブし、途中で郷に交代したことで、彼が無免許であることを知り、地井は郷を河川敷で鍛え運転のテクニックを教え、郷は免許が取れる。この時期、信州の山道はこんなにもでこぼこだったのかと驚く。

ついに松坂は妊娠し、地井には妻があることが、仮免試験の時に車の後ろにいた小美屋の店員が森下愛子が、偶然にも地井の義理の妹の言葉で分かってしまう。この時郷は言う、

「ダブル・クラッチだ!」

郷は、松坂と結婚する気があるのかと問い詰めるが、地井の答えは曖昧だった。

そして、ある夜、店に山梨の病院から電話があり、松坂が流産して危篤だという。レオーネで山梨に向かう郷。石和病院の医師は、蜷川幸雄で、「今夜が山だ・・・」というが、その通り翌朝死んでしまう。

地井の車に多くの傷を見つけた郷は、地井がでこぼこ道で松坂の体を揺すって流産させたと思い、彼の車を追う。

そして、崖で追突させて、地井の車を落としてしまう。重傷を負った地井だが、郷を一切告発せず、自分の運転ミスで済ませる。

そのニュースを聞いたとき、郷は言う、

「俺は何をやっても中途半端だ、あいつを殺すこともできなかった!」

中途半端で彷徨しているだけの若者の姿を結構鋭く描いていたと思う。

衛星劇場

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

コメント

  1. 雫石鉄也 より:

    なつかしいです。五木寛之の原作はだいぶん昔に読みました。ほとんど忘れましたが。
    私は、若いころけっこう飛ばすほうでした。六甲山のドライブウェイで、ダブルクラッチだヒール・アンド・トゥーだとドライビングテクニックをみがきました。
    ダブルクラッチ。マニュアル車ならではのテクニックですね。オートマチック全盛のいま、忘れ去られようとしているテクニックですね。

  2. ダブルクラッチってなんですか。劇中で地井が、郷に教えるのですが、よくわかりませんでした。
    私は、オートマ免許で、それも今年4月に返上しました。首都圏に住んでいれば車は必要ないのですから。

  3. 雫石鉄也 より:

    ダブルクラッチはマニュアル車でシフトダウンするときに使うテクニックです。
    車はエンジンの回転をタイヤに伝えて走ってます。
    エンジンの回転を状況に応じてタイヤへ伝える時、各種歯車を経てタイヤへ伝えているわけです。発進とか低速の時は大きな歯車。するとタイヤの回転数は少ないが大きなトルクが得られます。高速になって慣性がついてくると小さな歯車です。
    オートマチックはこれを自動的に行っています。マニュアル車は手動でシフトレバーを操作して歯車を選びます。
    加速する時は、大きな歯車にシフトします。すると、エンジン側の回転数とタイヤ側の回転数が違います。通常はシンクロ装置の働きで両方の回転数が同じになってシフトチェンジします。ときどき、シフトチェンジの時、ヘタしてガリガリと音を立ててる人がいますが、あれは歯車の噛みあわせが悪いからです。
    トップギアで走行していて、加速しようとすると、そのままでも車は加速しますが、より鋭い加速を得ようとすると、下のギア、サードに落したほうが加速がいいです。で、トップからギアをいったん抜き、ニュートラルでアクセルをふかし、サードにギアを入れて加速します。するとエンジン側とタイヤ側の回転数が同じになって、スムースに加速するのです。一度の変速操作で、二度クラッチを踏むのでダブルクラッチというのです。
    マックィーンの「ブリット」あの映画でマックィーンがムスタングを走らせているとき、ブオン、ブオンと2度エンジン音が高くなります。マックィーンがダブルクラッチを踏んでいるのですね。