9号館が演博事務所になっていた

日曜日は、「映画甲子園」の審査員をするために早稲田に行く。

ちょうど早稲田祭をやっていて、大変な人出、早稲田祭は、全国の学園祭で最大の動員があるそうだが、全学で5万人もいるのだから当然だろう。坂井滋和先生によれば、早稲田では文学部のみならず、政経、教育、理工さらにスポーツ体育学部にも映像の学科があり、全学で映像を勉強しているそうで、時の流れと言うべきだろう。

「映画甲子園」の会場は、国際会議場井深記念ホールだが、ここは昔は安倍球場で、我々一般学生は入れない野球部専用のグランドだった。ソニーの井深大さんが寄付された建物で、こうした例は欧米では普通だが、日本では少なく、さすがに井深さんである。

この前は、元9号館で、ここは1960年代末は劇団が屋根裏部屋を占拠し、勝手に芝居をやっていたが、この中の学生の一人には村上春樹もいたとのことで、彼の小説に出てくる。

現在は、演劇博物館の事務所棟になっているとのことで、早稲田も結構キャンパスは充実しているようだ。

井深さんが、早稲田を出て入ったのは、東宝の祖先になるP・C・Lで、ここは本来は録音専門の会社だったのだ。それが、日活から提携を破談にされてやむなく始めたのが映画の製作だで、その後阪急グループの資本が入って東宝になったのである。

その井深さんがご寄付されたホールで、高校生の映画コンクールが行われるのも意義深いものがある。PCLの録音技術は、今から見れば当時の欧米の特許に触れる恐れもあるものだったそうだが、現在聞いても、その録音は松竹や新興キネマのものに比較して、格段の差があり、台詞がきちんと聞こえる。

今年で13回目とのことで、予備審査を経た、短編4本、自由作品4本が上映されて審査した。

高校生なので、実際に製作した連中は卒業していて、タッチしていなかった下級生が出てくると言ったこともあったが、大変に面白かった。

短編部門では、大阪の明星高校の『ぼく@トイレ』が関西弁の作品で、トイレでしか弁当が食べられない少年が、様々な男がトイレに来て、それなりの悩みを訴えるというのが最優秀になった。中に、ワンシーン・ワンカットの作品があり、質問すると「『カメラを止めるな』を見て」と言うのだったのは当然だったが、「若者は流行に敏感だな」と思う。

勿論、マネすることは表現の始まりであり、悪くはないが、問題は表現する内容に合っているかだ。ここでは男女生徒たちの微妙な心の揺れ動きを主題としているもので、「細かなカット割りで感情を表現すべきで、ワンシーン・ワンカットは相応しくない」と助言しておく。

自由作品では、埼玉県川越高校の『日輪の下に』が良く、最優秀作品に選ばれた。

題名からして右翼的だが、これは埼玉の県立高校6校の応援団の応援発表会をドキュメントしたもので、非常に面白かった。

応援団と言うと、昔の日活の『嗚呼、花の応援団』に象徴されるように、ダサいものの代表だが、埼玉の県立高校では、昔ながらの応援団があり、異常な服装で演技をしているのだ。

1校以外は、すべて男子高校だが、埼玉県では戦後も男子校と女子高が分かれていて、男子校は依然として女子がいないことが、前世紀の遺物のような応援団を残しているのだと思えた。

これも日本の一つの伝統だなと改めて思った。

新人監督映画祭の大高会長、和田議長と帰りは学芸大学近くの焼き肉屋で飲む。

久しぶりに映画に浸った一日で、少々疲れた。

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