近年、見た映画でこんなに面白い作品を見たことがない。
日本の男優で一番キザが様になるのは田宮二郎だと思ってきたが、ここでの天知茂も凄い、非常に決まっている。
話は、ジュリアン・ソレルもので、貧乏から成りあがった実業家の天知と、貧しい家の娘の佐久間良子が偶然に知り合い、互いに引き合うと共に、助け合って財を成してゆくものだが、最後は既成勢力の裏切りで、失敗が示唆される。
面白いのは、この二人に対立する男女を巧妙に配置されていることで、天知には春日俊二、佐久間には岩崎加根子、そして後半には姪の大原麗子が出てくる。
監督の村山新治によれば、大原麗子の高いトーンの台詞の他の俳優が調子を狂わされたとあるが、よく考えれば、大原や加賀まりこらの若いテレビ世代の映画界への初登場だったのだと思う。
原作は五味川純平で、脚本は長谷川公之と意外なスタッフだが、五味川は『人間条件』や『戦争と人間』で左翼的小説で有名だが、こうした大娯楽ものも書いていたとは少々驚く。
誰か、実在の男をモデルにしているのだと思うが、非常に面白かった。
阿佐ヶ谷ラピュタ