『ごはんの時間2い』

戸塚区ふれあい文化祭の行事の一つとして、県立桜陽高校演劇部が『ごはんの時間2い』を戸塚公会堂で上演した。
題名で、分かるとおり高校生の「教室劇」である。
地方の工業高校の工業デザイン科2年生という設定で、主に将来の進路が話される。
端的に言えば、無駄なおしゃべりであり、かつての自転車キンクリートの芝居は皆こうだったな、と思った。
同時に大げさに言えば、これは『ゴドーを待ちながら』の一変種でもあるの、と思った。
何も、劇的なことは最後まで起こらない、ずっと無駄なおしゃべりで時間を過ごす。
これは、20世紀の、世界の戦後社会の構造のすべて、と言っても過言ではない。
だから、高校生の演劇で、相変わらず「教室劇」が行なわれるのだとも言えるのではないか。
最後、数少ない女性的な男子生徒から、「女性も大変だが、男だって、俺のように女性的な人間は、すぐに男のくせに男らしくないと非難されるが、それは男は男らしく、女は女らしくという男女差別だ」と提起され、全員の朗読的台詞の暗示で終わる。
ギャグが例によってすべてテレビの真似なのは白けるが、それ以外にお笑い的教養がないのだから仕方がないだろう。
だが、高校生はバーバル・ギャグのタイミングは上手い。体技は駄目だが、これは稽古の問題で、きちんとやれば相当に見られるものになるだろう。
要は、そうしたお笑いの稽古を真面目にやるか否かであるのだが、これはドリフーズが、テレビの『8時だよ、全員集合!』でどれだけリハーサルをやったか、調べれば分かることだ。

ただし、劇中で、公務員でも、職場結婚した場合、男女どちらかが辞めなければならないとする慣例があって、女性が働きやすい職場ではない、との台詞があった。だが、今時そんな地方自治体は、日本国中にないだろう。
昔々、群馬県のどこかで、そうした慣例があり、裁判になって市側が敗訴したと思う。
もう、20年くらい前のことである。
行政も、一般企業でも社内結婚したら、どちらかが辞めるといった慣例を持っている組織はまずないだろう。
勿論、同じ職場にいるのは支障があるので、どちらかは異動させるだろうが。

劇の終了後、福祉関係団体によって、「手話ダンス」が、上演された。
すべて善意の塊だが、第三者から見ると喜劇的情景だった。

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コメント

  1. さすらい日乗 より:

    結婚退職裁判
    ネットで調べるとすぐに分かった。
    住友セメント事件であった。
    昭和40年代だから、随分以前である。

    だから国や地方自治体で、こうした慣例を持っているところは、今はどこもないと思う。