原知佐子、死去

女優の原知佐子が亡くなられた、84歳。
彼女と夫で監督の実相寺昭雄が一緒に神保町の喫茶店古瀬戸に入って来たのを見たのは、もう10年くらい前だろう。
古瀬戸は、『アモーレの鐘』の大根女優城戸真亜子の絵が飾られている不快な店だが、広いのでときどき行っていた。
狭いのは嫌いなのだ。
「ああ、この二人は夫婦だったな」と思った。

原は、元は新東宝の女優で、倒産後は東宝で活躍した。堀川弘通監督の映画『黒い画集・あるサラリーマンの証言』での、主人公小林桂樹の浮気相手など非常に良かった。
1962年に新東宝が倒産すると、俳優は各社に引き取られたが、一番得したのは東宝だろう。
高島忠雄、池内淳子、大空真弓、そして原知佐子と主役、準主役級の俳優を取ったのだから。
大映は、和者が多いので、宇津井健の他、万里昌代、三条魔子が移籍した。
松竹は、男優が不足していたので、菅原文太、吉田輝男、高宮啓二のハンサムタワーズ、さらに寺島達夫を入れた。
池内淳子など、東宝では『花影』、『如何なる星の下に』、『みれん』などの文芸作品に出ているほか、駅前シリーズなどでも軽い役を演じて作品を向上させた。
原知佐子も、多数の作品に出ているが、決定打は少なかったようだが、私は篠田正浩監督の『乾いた花』での、池部良の情婦役が印象に残る。
ご冥福をお祈りする。

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