無差別殺人事件が起こっているが

土浦市で、8人刺傷事件が起きた。実に痛ましいことである。だが、殺人事件の死者数は、平成19年度は警察庁の統計によれば、1,199人で、驚くことに戦後最低の数字なのだそうである。

もし、日本の多くの人に、「今、治安は悪くなっていますか、良くなっていますか」と聞けば、多分ほとんどの人が「悪くなっている」と答えるだろう。
だが、実際は現在ほど社会の治安が良くなっている時代はないのである。
それは、当たり前で、現在は極めて豊かな時代なのだから、犯罪が減少するのは、当然なのだ。
俗に、人が宗教に行くのは、貧、病、困と言われるように、犯罪の原因で一番大きいのは、なんといっても貧困、金銭から来るものである。だから、日本で最も犯罪や殺人事件が多かったのは、敗戦直後の日本全体が貧困にあえいでいた時代である。

だが、なぜ日本の一般市民は、治安が急速に悪くなっていると感じるのだろうか。
それは、多分日本の市民社会が急速に変化しているからだろう。
私の母は、もう20年近く前に85歳でなくった。
母は横浜の鶴見の生まれだが、結婚して東京池上で戦前から60年以上住んでいた。
そこで、母に聞くと、池上の多くの家族のことはまるですべて知っているのではないか、と思うほどにとてもよく知っていたものだ。
「あの家の奥さんはどこから嫁に来て、子供は何人いて、学歴、職歴はこうだ」と本当かうそかは分からないが、懇切丁寧に教えてくれたものだ。
このように、ある程度長い期間住んでいる人間にとって、その町に住んでいる人間は互いによく知り合っていたものである。
だが、最近の都市化の一層の進展の中で、隣近所の相互の近親感は、急速に失われつつあり、誰がいるのか分からない状況になっている。
その意味で言えば、日本では東京のような都市でも、つい最近までは「大きな村社会だった」ということだろう。
また、非西欧系の在日外国人の増加は、さらに不安感を増やしていると思う。
いずれにせよ、日本の社会が従来持っていた同質性が失われていることの反映であることに間違いない。

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