『雪夫人絵図』

昭和25年の溝口健二監督作品、主演は木暮三千代、柳永次郎、上原謙。
原作は舟橋聖一で、元華族の「お姫い様」雪夫人の戦後の没落の悲劇。
溝口作品としては戦後の混乱期の失敗作とされているが、それほどつまらなくはない。
少なくとも、この直後に撮った大岡昌平原作の『武蔵野夫人』のばからしさから見れば遥かに良い。
それは、主演女優の差で、ここでの木暮は没落する華族のお姫様がぴったりの適役だが、『武蔵野夫人』の田中絹代は、大岡文学のヒロインとしてはとてもおかしいからだ。

新藤兼人によれば、この作品は「生煮え的」だそうだが、確かに曖昧で良く分からないところがある。
女中の久我美子が、木暮と柳の寝所に行き、二人の姿を見るところなど、当時の性的表現の限界で何も見せない。今なら、身悶える夫人の姿を見せるところだろうが。
粗野な成り上がり者の夫の柳を「心は嫌っているが、体は好いている」という描写があるべきところだ。だが、何もない。
こう書くとフェミニストから猛攻撃を受けそうだが、それは事実で、さんざ日活ロマンポルノで描かれた男女関係の機微である。

日活と言えば、この『雪夫人絵図』は、1970年代に東映で佐久間良子主演、成沢昌成監督で映画化されたが、何故かオクラ入りになった。
ところが、大変珍しいことに1975年に日活でロマンポルノとして公開されている。
私は見ていないが、どの程度の性的描写だったのか、もし見られた方があればご指摘下さい。

最後、雪婦人は芦ノ湖に身を投げて死ぬ。
湖畔の「山のホテル」が出てくる。
ここには、私も結婚した当初に妻と行ったことがあるが、食事も部屋も良いホテルだった。
小田急系のホテルだと思うが、元は誰か大富豪の別荘だったと思う。
いつか、機会があればまた行きたいものだと思っている。

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コメント

  1. SS より:

    Unknown
    ×雪婦人
    ○雪夫人

    佐久間良子主演作
    見てみたいですね。
    ポスターはエロいです。

    http://page10.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/m53708194

    しかし、ロマンポルノだと期待して見に行った観客はどんな感想を持ったのか?
    ヌードは当然ながら、大して過激な描写があったとも思えないんですが。
    それとも、ボディダブルで「佐久間良子のヌード」が出てくるのでしょうか?

  2. bakeneko より:

    >>元華族の「お姫い様」雪夫人の戦後の没落の悲劇。
    ———————————
    久我美子は伯爵令嬢だそうで、没落した家族を救うために、おばさんが金持ちの年寄りと結婚しました.
    溝口健二はそれを知っていて、没落しつつある華族の家に奉公を始めるお手伝いさんの役をやらせたはず.