「彼はバスだ」


私が、大久保英太郎氏に続き、議長秘書を勤めたのは、西区の鈴木喜一さんだった。
この人は、後に現在の菅義偉氏に、西区の市会議員を追われるなど、やや不幸な人だったが、人間的には好きな人だった。
ただ、この人にも、変な「差別意識」のようなものがあった。
それは、横浜の交通事業のことだ。
今は、バスと地下鉄が横浜市の交通事業だが、元は路面電車、市電である。
そして、鈴木先生は、市電の運転手だったのだ。
西区久保町の家は、貧しかったのだろう、学校を出ると、鈴木喜一少年は、当時給料が良かった市電の運転手になった。
給与を貯めて、両親には家を買ってあげ、自分はミシン会社リッカーミシンの代理店となった。
若い頃から政治が好きだったようで、横浜の院外団の一員となった。
そして、戦時中に市会議員になったのだ。

私が、議長秘書をやっているとき、あるとき、同じ交通局出身のN議員のことになった。
すると、鈴木議長は、
「彼はバスだ!」と言ったのだ。
確かにその通りで、交通局はバス事業もやっていて、今日に至っている。
だが、横浜市交通事業の元は、路面電車、市電事業であるので、どうやら歴史的に「バスよりも電車の方が上だ」と思っている人はいたようだ。
大して悪意はないと思うが、面白い意識だと思ったものだ。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする