言うまでもなく、岸洋子のヒット曲をもとにした歌謡映画。
日活は、歌謡映画が得意で、石原裕次郎の『銀座の恋の物語』『赤いハンカチ』、小林旭の『南国土佐を後にして』『赤い夕陽の渡り鳥』、吉永小百合の『いつでも夢を』『寒い朝』、あるいは山内賢、和泉雅子、梶芽衣子ら若手の『涙くん、さよなら』、『夕陽が泣いている』、『二人の銀座』など多数あった。
主演は浅丘ルリ子、脚本山田信夫、監督蔵原惟繕なので、歌謡映画ではビックな方である。
ミュージカル女優の浅丘は、恋人岡田真澄との関係、多忙な生活等で倦怠に陥っている。脚本家小松方正が書いた浅丘の私生活を基にした新作を拒否する。
だが、難病で盲目になる少女松原智恵子と彼女を必死に救おうとする浜田光夫の真摯な気持ちに触れて思い直す。
そして、新作脚本を読見終わったとき、東京に夜が明ける、というご都合主義映画である。
蔵原映画は、所謂「めくるめく快感」の映像が特徴で、それがあるときは素晴らしく、ないときは駄目になるが、これはまあまあなところだろう。
ほとんどは「楽屋落ち」だが、浅丘がキャバレーで偶然出ていた岸洋子のステージへ、しぶしぶ花束を持って行く。だが、そこでの対話は上手に話すところが、面白い。
浅丘の一日を描くもので、その中で東京のキャバレー、ホテル、秘密クラブ、羽田空港、ボーリング場等が出てくる。
キャバレーは、赤坂のみかど、ホテルは有楽町の日活ホテル、ボーリング場は新宿にあった東京フェアレーンのようだ。
それらは今は全部ないので、貴重な映像である。
そして、これが浅丘ルリ子が、典子(テンコ)をやった最後の作品になる。