『ごぜ・盲目の女旅芸人』『裸の時代・ポルノ映画 愛のコリーダ』

川崎市民ミュージアムの今月は大島渚特集。
テレビのドキュメンタリー2本。ただし、『裸の時代』は、大島が映画『愛のコリーダ』を撮影していたときのドキュメントで、監督は戦前からの記録映画監督の野田真吉。

『ごぜ』は、1972年新潟長岡の「最後のごぜさん」と言われた杉本さんらが新潟の奥を旅する話だが、勿論特別にやってもらったもの。
厳密に言えば、やらせドキュメンタリーであるが、それは冒頭ではっきりと言っている。
3人一組のごぜさんは、電車に乗り、新潟の奥深い農村に徒歩で廻って行く。
ある家の玄関先では、特別に「門付け」もしてもらい、一節歌う代わりの米を貰う。
最後、村の庄屋の家に行き、夜に多くの村人の前で演じる。
ごぜ唄の多くは『葛の葉』など「子別れ」もので、説教節とよく似ている。
また、村人たちも自分たちの唄を歌う。
実に素朴だが、本当の唄の饗宴である。
こういうものは失われ、カラオケになったのが日本の近代化である。

『裸の時代』は、大島が阿部定事件を題材に、京都の大映撮影所で『愛のコリーダ』を撮影していたときのもの。
元気一杯、自信満々で派手な格好をした大島渚、制作の若松孝二、そして主人公の藤竜也と松田英子らが出てくる。
この映画は、私は見ていないのだが、女中役で東恵美子さんが出ていることを初めて知った。
由緒ある大映のスタジオであり、セット、衣装等も随分金を掛けて撮っていたことが分かる。
それにしても、藤竜也も松田英子も、本気で好き合っているように見えるのはさすがプロの役者である。
勿論、肝心のセックス・シーンは関係者以外立ち入り禁止でナシ。

この映画は、フランスの会社の製作で、フィルムもフランスから持って来て日本で撮影し、それをすでにポルノ解禁だったフランスで編集・公開することで、当時はまだポルノ禁止だった日本の法律をくぐった作品である。
言わば、フランスの撮影隊が「日本ロケ」した外国映画の形態を取っていたのだ。
日活には『実録阿部定』という田中登の名作があったが、それを越えていたのだろうか。

午後は、『飼育』と『新宿泥棒日記』が上映されるが、どちらも見ていて大した作品ではないので、見ずに帰る。

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