『宙をつかむ』

紀伊国屋ホールで、円の『宙(そら)をつかむ』を見る。
出来は悪くない。
演劇集団円の芝居を見るのは随分久しぶりで、前に見のは、西新宿にステージ円があったときで、岸田良二の劇だったと思う。

話は、太平洋戦争末期、日本軍が陸海共同で開発したロケット戦闘機「秋水」に関するもの。
海軍じいさんと呼ばれる料亭の親父橋爪功が大奮闘。三星重工、言うまでも泣く三菱重工の技術者が陸海軍と協力して、開発に当たる。ドイツから設計図の一部ももたらされる。
勿論、秋水は完成せず、8月15日になってしまう。
日本の無条件降伏を信じなかった橋爪も、米田海軍大臣(言うまでもなく米内光正のこと)の言でやっと現実を認める。

最後、秋水開発の技術者が、戦後は自動車や新幹線等の開発に当たったと今日の経済発展に貢献したとの字幕が出る。
まるで、NHKテレビの「プロジェクトX」で、白けた。
だが、同時にこういう「プロジェクトX」路線と言うのがありうるのでは、と思った。
なかなか路線のない新劇団にとって、企業秘話の「プロジェクトX」路線はありうるのではないか。
円の芝居は本当に久しぶりだが、役者のレベルが高いには、あらためて感心した。
だが、劇中に茶番劇として『愛染かつら』のパロディーがあったが、原作と違っている。作者たちは、映画を見ていないのではないか。

昔、オンシアター自由劇場に出ていた微熱少女の加藤美津子が、中年の仲居役だったのには、歳月を感じた。

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