NHKにとって映画は問題ではないのか

NHKスペシアル『日本はなぜ戦争へと向かったのか』の3回目は「熱狂はこうして作られた」として、戦争への熱狂を作り出したメディアのことだった。

日中戦争が始り、新聞各社は取材競争に走り、号外を出し、それによって販売部数を伸ばしたこと、さらに当時新しくできたメディアであった日本放送協会のラジオ放送も戦争を実際に戦場から中継するなど、国民が戦争に熱狂することを助長したことが描かれた。

確かにそのとおりだが、昭和初期から戦時中に一番国民を戦争へとかきたてたのは、実はニュース映画だった。
当初はサイレントだったニュース映画は、すぐにトーキーになり、新聞及び通信社各社は、映画会社と提携して毎週ニュース映画を映画館に配給する。
また、映画法によって文化映画の強制上映も決められ、このニュース映画と文化映画、さらに漫画映画等を上映するニュース映画館も大都市にでき、人々はそこに駆けつけたのである。
そりゃそうでしょう。
テレビのない時代、実際に戦場の様子が見られるニュース映画が人気になったのは当然である。
中には、「画面の中に子どもや兄弟の姿を発見できるのでは」と、出征兵士を抱える家族は映画館に詰掛けたと言われている。

そして、映画法によってニュース映画各社は、昭和16年に社団法人日本映画社に統合され、一大記録映画会社になり、毎週日本全国に戦争報道を伝えることになる。
東京にも、いつ最近まで新橋ニュースとか神田ニュースと言った小さな映画館があったが、これはその名残である。
横浜にも野毛に、横浜ニュース劇場というのがあったが、これは戦後できたものであるが、戦後もニュースはそれなりの人気を持っていたのである。

こうしたニュース映画のことを、今回NHKが完全に無視したのは、理解できない。
ニュース映画は、戦後も日本映画各社の予告編と同時に上映されていた。
だが、テレビの出現により、ニュース映画の意味は急速になくなる。
最後まで、東宝系は日本映画新社制作のニュースを上映していたが、1970年代にはなくなる。
かつての日本ニュースなどは、すべてのフィルムは今はNHKに売却・保管されている。
そのNHKが、ニュース映画を取り上げなかったのは不思議と言うしかない。
ニュース映画など、NHKにとってはとるに足らないメディアと言うことなのだろうか。

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コメント

  1. なご壱 より:

    Unknown
    私も指田さんのご意見に同感です。
    当時国際ニュースや読売ニュースなどのニュース映画会社が挙って特派員やカメラマンを戦地に派遣して戦争機運を高めていたのは事実です。
    私も九段下の昭和館の一階で流されている懐かしのニュース映画をよく見たものです。

  2. さすらい日乗 より:

    ありがとうございます
    コメント有難うございます。

    ただ、ご指摘の国際ニュース(読売国際ニュースでしょうか)、は戦後、日本映画社が日本映画新社に改組されて、東宝・朝日新聞系のニュースのみになった後、映画各社が始めたものの一つです。

    読売国際ニュースは松竹系で、毎日ニュースは日活系、大毎ニュースが大映系で上映されていました。その他、中日ニュースとか、サンケイスポーツ・ニュースなどもあり、ピンク映画館を見に行くと見ることができました。
    また、海外のムービートーン・ニュースとか、メトロ・ニュースなども洋画館では上映されていました。

    戦争中は、すべて日本映画社の「日本ニュース」のみが上映されていたのです。

  3. uhgoand より:

    見ないものは無かつたこと
    それは(担当ディレクター?が)知らない(あるるいはみない)からで、今の世、自ら知らないもの、見えないものは存在しないものとなり無視され、なかつたことにされる。
    これもその一つで、ニュース映画は映画(メティア)とみていなかつたのであらふ。
    しかし、懐かしき Movietone News。アイク、ダレスにハマーショルド。
    それから竹脇昌作。コダマ、ダイナナホウシュウ、セントライトもみんなこれで知り覚えた。よくあの口吻を真似て遊んだが――

  4. uhgoand より:

    訂正
    セントライトではなくトキノミノルの勘ちがいでした
    訂正します