原作林房雄、脚本八住利雄、監督豊田四郎、主演池部良、山口淑子。貧しい若者池部が山口を助けたことから知り合い、二人は結婚し、山口の力で金持ちになるが、山口は白蛇の化身だった。周りの者は、二人を引き離そうとする。山口は怒って大嵐を起こし(円谷英二の見せ場)、町を破壊してしまう。だが最後、池部は山口の愛に打たれ、山口と一緒になり二人は昇天して行く(ワイヤーアクションのない時代だったので、撮影は大変だったらしい)。
豊田にとって中国の伝説など、無関係だったろう。だから、ここで描かれるのは、1組の男女の愛である。助監督だった広沢栄の本を読むと、豊田は主題に悩み、貧民の若者(池部は貧民には見えないが)にとっては、蛇や悪魔だろうが、その境遇から出るには女を選ぶだろう、とういうものであり、山口も女としては同じだということだったらしい。
山口淑子の弟子八千草薫が、最後は教条的に池部との情交を否定するのが、おかしかった。
八千草は、同じ豊田の『雪国』でも岸恵子に対して批判的な役割を演じている。豊田のお気に入りだったようだ。