文革の不思議

BSで、『周恩来』の生涯を描いた番組が放映された。
ここで、考えると実に不思議なのは、1960年代の文化大革命である。
中国の人は、「プロ文革」とよく言う。プロレタリア文化大革命の略である。
恐ろしく熱狂的で、問題のある文化大革命が起きたのか、これは中国史のみならず、世界史に残る謎の一つだろう。
社会が近代化するときの、民衆の反発、恐れが根底にあったのだろう。
イギリスでも、産業革命の時代に、「機械打ちこわし運動」、ラッダイトが起きているが、同じようなものだったのではないかと私は思う。

勿論、文革は、毛沢東の、彼の「大躍進運動」の失敗を追及され、その前近代性を指摘、否定され、現実的経済政策路線を取りつつあった劉少奇、鄧小平らへの反発、嫉妬に基づくものである。

だが、問題はなぜ、明らかに誤謬であった文革運動が、民衆の心を捉え、劉少奇らの現実路線が受け入れられなかったのか。
これについては、1970年代に政治学者の滝村隆一が、明確に答えを出している。
それは、「毛沢東語録」に象徴されるように、イデオロギーの宣揚、確立に努めた文革支持派に対し、劉少奇以下の現実派が、自分たちの路線のイデオロギー的確立を怠ったからである。
思想やイデオロギーなど、バカバカしいと思っていると、とんでもない反撃にあった実例と言うべきだろう。

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