シネマ・ヴェーラの時代劇特集、『十三人の刺客』は見ていなかったので、行くことにする。
東映が時代劇の末期に作った集団抗争時代劇シリーズは、『大殺陣』と『十一人の侍』は見ていたが、これは見ていなかった。
だが、どれも似た作風で、『十三人の刺客』は、最初なので、その発想の面白さはある。
だが、よく考えると、この企画も片岡千恵蔵や月形龍之介、嵐寛寿郎など、役者として使えなくなって来た者の再起用法にも思える。
いずれにしても彼らは、近衛十四郎や品川隆二のようにテレビに行かなければ、ヤクザ映画全盛でクビになったのである。
バカ殿の菅貫太郎の演技が印象に残る。
今回見て、むしろ面白いと思ったのは、1946年の丸根賛太郎監督、阪東妻三郎主演の『月の出決闘』の方だった。
昔々、横浜の大勝館で見たことがあり、民主主義賛美のつまらない作品だと思っていたが、今度見ると結構面白い。
青山杉作が演じる大原幽学が笑ってしまうが、その民主主義、労働賛美、組合賛美に嘘がないのである。
当時の世相であるが、そうした今ではほとんど嘘にしか聞こえないものが、その頃は真実だったことがわかるのであり、おかしくないのだ。
だから、最後の阪妻の大原幽学らへの加勢も信じられるのである。
音楽が、深井史郎で、大変重厚な響きを聴かせる。
大映京都作品なので、多分関西の楽団を指揮してのものだと思う。
シネマ・ヴェーラ渋谷