何十年かぶりに、一日で5本の映画を見た。
と言っても、2本は中編で、1本は短編だったが。
まず、神保町シアターで1985年の『雪の断章 情熱』
相米慎二監督作品で、主演は斉藤由貴、不幸な生まれの彼女をめぐる男が、榎木孝明と世良公則。
脚本は田中陽造で、彼の指定なのか、あるいは相米のアイディアかは分からないが、諸所に「この物語はつくりものですよ」というエクスキューズがある。
例えば、札幌の斎藤のところに、東京の榎木から電話がかかってくる。
出た斉藤を写したカメラがそのまま横移動すると、東京の榎木がいる。
また、川のふちの土手で二人が豪雨の中で議論していると、画面の奥を松明を持った白装束の人間たちが、次々と船に乗り込んでいる。
全体として、演劇的雰囲気を出している。
それにしても、『セーラー服と機関銃』の薬師丸ひろ子、『お引越し』の田畑智子、そしてこの作品での斉藤と言い、相米は、ロリ・コンである。
大人の女を描いたのは、『魚影の群れ』の十朱幸代と夏目雅子くらいだろう。
少し時間があったので、神保町のミュージック・マガジン社に行き、編集部の人に挨拶する。
ここに来るのも、15年ぶりくらいだろう。
今後の原稿についていろいろと話す。
地下鉄で南阿佐ヶ谷に行き、阿佐ヶ谷のラピュタで2本見る。
山本薩夫の『真空地帯』と春原政久監督の中編喜劇『月は地球をまわっている』
『真空地帯』は、昔並木座で見たことがあり、その時は大して面白いとは思わなかったが、今回見て結構面白いと思った。
しかし、戦前の陸軍の内務班の運営は、異常である。
大の男を狭い兵舎に押し込め、ほとんど家に帰さないのだから。
夫婦持ちものみならずとも、性的不満がこうじて、いじめや暴力になるのも当然だろう。
『月は地球を回っている』は、1959年の日活喜劇で、街頭放送などを営業している広告会社のアイディア社員岡田真澄の話。
相手役は、中村万寿子という女優で、この時期日活にいたらしいが、ほとんど見たことがない。
広告会社社長の西村晃とデパートの宣伝部課長小沢昭一のコンビが大いに笑わせてくれる。
最後、流行のフラ・フープのコンテストを岡田が企画し、そこにジャズ歌手の中島そのみが出て来て優勝する。
この後中島は、東宝の『お姐ちゃんシリーズ』で、団令子、重山規子らと活躍する。
これは大変良く出来た面白い喜劇映画だった。
さらに東中野に移動してポレポレ東中野で大野一雄を主人公にした2本。
長野千秋監督の1969年『O氏の肖像』
これは昔から大変有名な作品だったが、1960年代の前衛映画のつまらなさが集約された駄作。
これに対してダニエル・シュミット監督の『KAZUOOHNO』は、たった15分の作品だが、音楽、アイディア、撮影も素晴らしく充実した作品だった。
映画は、長さではないことをあらためて知らされた一日だった。
コメント
Unknown
>相米は、ロリ・コンである。
女子中学生がわんさか出てくる「台風クラブ」なんぞ嬉々として監督したんでしょうね~w