『モラン神父』

川崎市民ミュージアムが、ゴダールの『勝手にしやがれ』『気狂いピエロ』など、ヌーベルバーク作品等を制作したジョルジュ・ド・ボールガールの作品を上映している。
『モラン神父』は、『サムライ』『いぬ』等のフィルム・ノアールで有名なジャン・ピエール・メルビル監督作品で、1961年のもの。

第二次大戦下のフランスの田舎、そこにはイタリアが侵攻してきたり、ドイツに占領されたりする。
通信教育会社の職員バルニーは、若い神父モランと知り合う。
バルニーは、無神論者だが、モランに彼女は次第に引かれてゆく。
だが、聖職者なので愛欲は不可能。
究極の純愛と言おうか、絶対に成就しない恋愛の純粋性と言うべきか、奇妙にエロチックになる。
視線の交差が性的表現になるのは、日本の成瀬巳喜男的とも言えるだろう。

笑ってしまうのは、バルニーが神父に性欲をいだくとき、神父は宗教的な論争のことを熱心に語っていることで、この辺のすれ違いは実に面白い。
こうした、観念的、宗教的台詞と現実的な台詞が交錯するのでは、日本の傑作戯曲である、田中千禾夫の『マリアの首』が良く似ている。
モラン神父が、ジャン・ポール・ベルモンド、バルニーは、アラン・レネの映画『24時間の情事』で有名な、エマニュエル・リバである。

評価の難しい作品だが、なかなか面白かった。

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