『サラゴザの写本』

最近見た映画の中では最も優れたものの一つだった。

3時間の大作だが、少しも退屈ではなく大変面白く見た。

11時からの上映で、10時過ぎには渋谷に着き少し早いので、会場の近くの喫茶店で休んでと思い、宮益坂を上がって会場に行くともう長蛇の列。

席はあるのか聞くと十分あるとのことで一安心。

長蛇は、平田オリザについての「観察映画」と重複したためのもののようだ。

でもこちらも満員になり、通路に布団を敷いて見る人もいる。

話は、19世紀に書かれたポーランドの代表的な幻想文学だそうで、17世紀スペインに攻め込んだナポレオン軍が不思議な本を見つけ、それはという具合に語れれていく。

主人公は、『灰とダイヤモンド』のチブルスキーの貴族の息子アルフォンソで、彼が荒野で経験する不思議で幻想的な騎士物語。

イスラムの美女やギターなども出てくる、異教的で、反宗教的な物語であり、一種の艶笑譚である。

物語の中の人物が出てきたり、消えたり、再度繰り返されたりと「入れ子構造」の作品で、筋を要約することは到底私にはできない。

カルスト台地のような荒れ果てた大地、荒廃した城塞都市、室内の複雑な建物など、まず美術が素晴らしく、硬質な画面がすごい。

音楽は現代音楽のペンデレツキなのだが、クラシックで特にすごいというほどではない。

俳優も誰もが不気味で異様な意思を秘めているように見え、見ている者が絶えず笑われているような気分になる。

怪奇映画としても、世界映画史上に残る傑作だろう。

1966年に作られていながら、今まで日本で公開されて来なかったのは、長さのためだろう。

これは大変な収穫だった。

                                

シアターイメージフォーラム

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