『セデック・バレ』

評判の台湾映画で、横浜のシネマジャックでも上映していたが見逃したので、渋谷に見に行く。

2部構成で4時間半という大作だが、まったく退屈しない大娯楽映画になっている。

話は、日本統治下の1930年に起きた霧社事件であり、これは知っていたが、昭和5年ではなく、もっと昔の台湾統治が始まった頃のことだと思っていた。

台湾の高地山岳地帯には、漢民族が来る以前から住んでいた先住民族がいて、主として狩猟生活を送り、各族の狩場を持っていた。

彼らは、狩猟で得た獣類を麓の漢民族の商人に売って生活していたが、日本統治による近代化により次第に民族的習俗は喪失されていく。

各部族には頭目がいて、その一人のモーナ・ルダオは、狩猟にも優れている他、知恵もあり、その統率力は他の部族からも尊敬を受けていた。

1930年10月27日、セデック族は、日本人警官の横暴に怒って蜂起し、交番を焼き討ちし、霧社での連合運動会を襲い、日本人134人を殺害する。

事件の深刻さに驚愕した日本側は、警官隊の増強はもとより、陸軍部隊を動員し、大砲はもとより飛行機から毒ガス弾まで投下する。

さらに蜂起に参加しなかった部族を使って日本軍の大部隊に反乱は鎮圧される。

娯楽映画としてよくできているが、やはり感じるのは、娯楽アクション映画を作るには、歴史的な民族的記憶がないとできないということだった。

この作品は、構図は逆だが、明らかに黒澤明の『七人の侍』を下敷にしていると思う。

『七人の侍』が優れていて感動的なのは、あれは黒澤が参加できなかった太平洋戦争の再現であり、その制作過程で彼は解放されたからである。

モーナ・ルダオ役の人はプロの俳優ではなく、映画も初出演だそうだが、表情が三船敏郎にそっくりである。

『七人の侍』をもとにした通俗映画に『片腕ドラゴン対アマゾネス』というイタリア映画があったが、ここでも黒澤映画は生きていた。

6月6日は、トークイベントに是非ご参加ください。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする