『アイコ16歳』

1983年、文芸賞を最年少で受賞した堀田あけみの小説の映画化、珍しいのは、高校の弓道部を描いていること。

弓道の映画といえば、戦時中の成瀬巳喜男の『三十三間堂通し矢物語』ぐらいだろう。

前半は、主人公アイコの富田靖子の日常を淡々と描き、さらに夏の合宿でのエピソード集である。

合宿の最終日、高校生が『マイムマイム』を踊っているが、この曲は実はイスラエルの民謡だが、まだこの時期までは流行していたのだ。

秋になり、理科の教師で、弓道の名人でもある紺野美沙子が出てきて、途端に作品は普通の映画らしくなる。

CBCの製作なので、庄司花江や笑福亭鶴瓶などの関西の喜劇人も出てくるが、鶴瓶がまだ若い。

最後、富田が憧れの紺野美沙子は、自殺未遂を起こし、校内で大騒動になるが、その時、富田は率直に心情を告白する。

すると、そのぶりっ子で嫌いだった同級生の紅子からも、賛美され、二人は和解することが示唆されて終わる。

青春映画としてはできは良いが、やはり脚本の桂千穂の力だろう。

ポルノ多作のシナリオライターが青春映画も書いているのは可笑しいが、ロマン・ポルノも殆どは青春映画だった。

本来は、大林宣彦が監督する予定だったが、忙しくてできず、大林のところに出入りしていた今関あきよしが監督したらしい。

役者は、全国で大々的にオーディションしたもので、この中から選ばれて主人公になり、富田靖子は大林宣彦映画にも出てスターになった。

他には、端役で出ていた松下由樹くらいしか現在の芸能界にはいないようだ。

高校野球の甲子園優勝校でも、プロ野球で活躍できるのは、1、2人なのだから、芸能界も当然なのかもしれない。

因みに監督の今関あきよしは、その後もモーニング娘、アイドルなどのロリコン映画を作っているようだが、逮捕されたこともある。

映画界で生きていくことは結構大変なこととご同情申し上げる。

衛星劇場

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