1944年、松竹京都で作られた時代劇だが、佐分利信、細川俊夫の現代劇俳優が出ている異色作。
幕末の文久年、横浜で生麦事件が起きた夜、薩摩藩の島津久光は程ヶ谷の本陣にいて、家臣大久保市蔵は、英人殺害の犯人について架空の名の岡野新助を言っておいたと言い、
久光も「痛快事」と幕府の対処を見ている。
攘夷派の若者の佐分利信、細川俊夫が横浜に来て、跳梁跋扈する悪徳外人と(言っても、斎藤達雄や南光明など、すべて日本人が演じる)を懲らしめる。
そこに、料理屋の娘の桑野通子、京マチ子姉妹が絡むのだが、脚本の整理が悪くて非常にわかりにくい。
脚本は、戦後は東映の娯楽映画で活躍した比佐芳武、監督は井上金太郎と小坂哲人。
最後は、外国船に閉じ込められていた中国人奴隷を救い出し、天狗は中国人に向かって、
「アジア人は、アジア人同士助け合って異国人と戦おう」という戦時中のメッセージになる。
マリア・ルース号事件のことだが、この辺はいかにも取って付けた感じがある。
飯島正の本『戦中映画史』を読んでも、「三人の天狗が出てきて、わかりにくい」とある。
現在では到底公開できるような水準ではないが、当時は作品も少なかったので、堂々と公開されたのだろう。
戦中期の日本映画界のひどさを物語る作品ではある。
衛星劇場