『みれん』

1963年の東京映画作品、瀬戸内晴美の原作で、主演は池内淳子、中谷昇、仲代達矢、脚本は松山善三で、監督は千葉泰樹。
話は、瀬戸内の体験に基づくもので、北京で軍医の浜田寅彦と結婚した池内は、浜田の実家で医者の妻として暮らしていたが、浜田が県会議員選挙に出て、その運動員だった若い仲代と結ばれてしまい、家族を捨ててしまう。
映画は、浜田の選挙運動から始まり、回想で話が語られていく。

だが、仲代とはすぐに別れ、今は染色の仕事をしながら、妻子ある売れない小説家の中谷昇と同棲している。
池内の家は、本郷の東大近くで、坂と立体交差の道路のある場所で、吉村公三郎の名作『足摺岬』では、軍事教練の行進が走ったところである。
中谷の妻は、電話の声と、夢の中でしか出てこないが、岸田今日子で、当時この二人は実際に夫婦だった。

本郷の喫茶店で、10年ぶりに仲代と池内は偶然に会うが、仲代は貧乏で暮らしに困っている様子。
再び池内の中に、仲代への恋心が生まれる。
中谷は言う、
「君は負け犬が好きなんだよ」
同じ女流作家の山岡久乃、編集者西村晃などとの馬鹿しあい喧嘩などのやり取りも面白い。
池内は、若い仲代に引かれ、彼から求婚されるが、なかなか踏み切れない。
仲代は若い世代を代表し、パンツ一つになって肉体を見せたりする。対して中谷は、年老いた老成の作家風。

最後、池内は、仲代と別れて、中谷とずるずるした関係を続けていくことを自ら認めて終わる。
中谷も江の島の自宅近くを二人で歩いている時にした「缶けり」を、高原の地でも一人池内淳子がしている。

どうにもならない男女を描いた作品で、日本映画の傑作は、成瀬巳喜男の『浮雲』だが、これもその線上にある傑作。
要は、わかっちゃいるけどやめられない、である。
よく知られていることだが、もともと『浮雲』は、千葉泰樹を監督として企画されたが、彼が病気になったので、成瀬に代わった作品である。
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コメント

  1. 映画ログ より:

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