やはり、時代が違った脚本だった 『月は上がりぬ』

金子遊君のイベントにいく前に時間があったので、京橋のフィルムセンターの図書館に行く。

小津安二郎の『月は上がりぬ』の初稿を読むためである。この田中絹代監督作品は、「もう1本の小津安二郎映画」というべきもので、そう悪くはない。チーフ助監督が斎藤武市、音楽が斎藤高順で、小津組である。

                        

ただ、最後に安井昌二が北原三枝に言う台詞が非常におかしく違和感がある。

「結婚したら、よく働いて、俺にすべて従うんだぞ」という意味のことを言い、「これ、いくらなんでも変じゃないの」と思える。

この脚本は、1947年末に小津安二郎が書いたもので、その時は映画化できなかった。

それを田中絹代監督の話があった時、電電公社の援助があったので、マイクロ・ウェーブ敷設の話などを入れて改作したものだった。

やはり、1947年と言う時代の違いだったのだ。

因みに題名は「つきはのぼりぬ」だそうで、「「つきはあがりぬ」では卑猥になる」と言うのが、小津安二郎の説明である。

城戸四郎もそうだが、この辺が江戸っ子の粋と言うか、含羞だと思う。その辺は、無粋な黒澤明と大きな違いである。

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