今では絶対に作れない映画 『沈丁花』

鎌倉の鎌倉市川喜多記念映画館に行き、1966年の千葉泰樹監督の『沈丁花』を見る。

脚本は松山善三で、衣装監修が高峰秀子、18大スターの共演とある。

東京にある歯科医院を舞台に、長女京マチ子、次女司葉子、三女団令子、四女星由里子の4姉妹の話で、母親は杉村春子。

                                 

四女星由里子と夏木陽介の仏前結婚式の件から始まる。

4姉妹の内、既婚なのは団令子だけで、長女と次女の結婚話がストーリーになる。

三木のり平や有島一郎らの出てくる挿話もあるが、次女の司葉子は、同じ町内で開業した歯科医の小林桂樹と教会で式を挙げる。

最後に長女の京マチ子は、唯一の男田辺靖雄の大学の先生仲代達矢と神前結婚をとげる。

『細雪』を女優二人にしたようなものだが、要は美女・美男を見せる映画で、その意味ではコスチュームプレイである。

杉村春子の上手さが光るが、他の役者の使い方も上手く、さすがに千葉泰樹と感心する。

この作品で興味深いのは、3組の新婚旅行が総て国内であることで、星由里子・夏木陽介組は場所はよくわからないが、温泉地のような感じ、司・小林は伊豆で、京・仲代は新幹線である。

開業医という上流に属する家族でも新婚旅行は、まだ海外ではなかったのである。時代の変化を感じる。

                                  

そして一番感じたのは、現在ではまず作れない映画だということである。

つまり、この映画の筋である、娘をいかにして結婚させるか、というよりもどう嫁にやるか、というテーマは、フェミニストに言わせれば、差別ということになるからだ。

第一、男女とも結婚しない者が著しく増大している現在、「行き遅れて」という心配は無用な心配に違いない。

もっとも、歴史的に見れば、日本でほとんどの者が一度は結婚するようになったのは、江戸の中期以降のことらしく、それまでは結婚しない、長男以外の者が多数いたとのこと。

つまり、次男、三男は、結婚せず、家に留まって労働していたのだそうだ。

だが、江戸時代に国民すべてが結婚するようになった結果、人口の増加がもたらされたとのことで、その意味でも、現在の非婚化の増加は、人口減になることになる。

一緒に見た先輩のMさんと、鎌倉で飲むのは不愉快なので、大船に出て飲む。

小町通りの原宿化には、驚いた。

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