先日見た『赤線地帯』は、本当に凄い映画で、一緒に見た職場の先輩の村岡さんは、今回が初めてだったそうだが、「俳優が皆そのものになっていたね」と非常に感心されていた。
女優たちも凄いが、中でも木暮三千代が一番だと思った。この中で、彼女は国を行政整理でクビになった夫・丸山修の妻で、乳呑児がいる生活苦から「通い」で、吉原の女になっている。
その歩き方が非常に上手いと思う。常に股を開いて、みっともなく歩行しているが、溝口の演出だろうか。
この映画だったと思うが、最後に息子に裏切られて頭が起こしくなるのが三益愛子だが、彼女が息子の入江洋祐と再会する工場のシーン、このでの三益の歩き方を溝口にさんざダメを出されたというのだ。
三益の歩き方は、舞台の歩き方で、本物の土の上を歩く歩き方ではないというのだ。
この役者の歩き方で思いだすのは、昔の劇団新派の役者たちの歩き方だった。
テレビで見た『佃の渡し』で、出てくるガヤの役者たちが、それぞれ別々の歩き方をしているのである。
渡辺保先生の解説では、「劇団新派は一番劇団のアンサンブルが良かった集団だった」そうだが、本当にそうだった。
三益愛子や町田博子など、売れない年増の娼婦たちのメークを見るだけでもすごいことが分かるに違いない。
お茶っ引き3人組 左から町田博子、京マチ子、三益愛子