『天皇と軍隊』

2010年に、フランス在住の渡辺監督が作ったドキュメンタリーで、田英夫、中川昭一、ベアテ・シロタ・ゴードンら、すでに亡くなられている方も出てくる。

フランス製なので、国内の記録映画とは違うフィルムも出てくるが、あまり驚くような画面はない。

天皇と軍隊についての新たな視点もないが、昭和天皇が、戦前は日本帝国陸海軍に、戦後はアメリカ軍に依拠していたことは大変良くわかる。

                                                                     

戦後については、豊下楢彦先生の『昭和天皇・マッカーサー会見』(岩波現代文庫)に書かれているが、米国の占領が終了する直前、昭和天皇は吉田茂首相の頭越しにマッカーサーと会見した。

そこでは、占領終了後の米軍について、吉田首相や外務省が有期駐留、つまり数年後には米軍は日本から撤退することを考えていたのに対して、米軍の「無期駐留」を要望し、同時に沖縄への駐留も要請したのである。

つまり、米軍の駐留と「沖縄の見殺し」は、昭和天皇によって行われたのである。

このことは、当時も、ほとんど学説としては認められていなかったので、この作品にも反映されていないのは当然だが、今では米国の情報公開で確定していることである。

横浜での上映最終日とのことで、地下の映画館は、ほぼ満員だった。安保法制問題の盛り上がりが、ここにも反映されている。

横浜ニューテアトル

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