今や巷の最大の話題の保育園だが、なぜ増えないかと言えば、根本的にはそう儲かる事業ではないからである。
私が横浜市のある区で福祉の担当部長をしていたとき、ある民間保育園が自主閉鎖をして問題になっていた。
我々の問題は、閉鎖で通えなくなった園児をどこに入れるかだった。
だが、要は民間保育園事業は、もちろんきちんと運営していれば損することはないが、そう大きく儲かるものではなく、そのことがよくわかったので、そこの運営者は早めにやめたのである。賢明な判断だったわけだが。
そもそも論になってしまうが、保育園は元は貧困家庭対策だった。戦前、スラム街などで、家が貧しく両親が働きに出て、家で子供を保育できない者たちを対象に保育園が福祉政策として始められたのである。記憶では東京の新宿のスラムが最初だったと思う。
だから今も保育は、厚生労働省の所管である。
私が小学生の時、ベビーブームだったので、1クラスは50人くらいだったが、幼稚園に行ったことのある者は、5,6人、保育園に通ったことのあるのが2,3人だった。地域にややスラム的なところがあり、そこの子供たちが公立保育園に通っていたようだ。
私は、どこにも行かなかった口であるが、5人兄弟に内、1番目と2番目の姉は、戦前の良い時代だったので、2人とも幼稚園に行っている。
だが、次の兄と一番下の姉は、時代がもう戦争で幼稚園どころではなく、二人とも行っていない。
私は、小学校の入学通知がなぜか遅れた時、「このまま来ない方がいいな」と言っていたと母がよく言っていたように、家から出るのが嫌だったので当然幼稚園にも行っていない。
さて、多くの方が誤解されているようだが、公立、私立を問わず保育園に入ったとき、親が徴取される保育料によって直接に保育園は運営されているわけではない。保育料は、園にではなく市町村に納入されるのは、そのためである。
民間保育園の運営は、園児の割合によって、市町村(最終的には国から来る交付金)から交付される保育の措置費によって大部分は運営されている。
この「措置費制度」は、特養などの施設でも同様であり、日本の福祉制度の根幹の一つである。
だから、園は保母の人件費によって儲けを出すしか方法はないのである。
多くの民間保育園では、主任保母を置き(それは大抵は園長の親族)、その方に払う給料は高くしても、他の保母はなるべく若い人にして人件費を抑えて、なんとか余剰を出すというのが実情だと、以前に民間保育園の園長から聞いたことがある。
多分、そうした構造は大きくは変化していないと思う。
そうなると保育園を増やすには、公立が頑張るしかなくなる。
民間保育園に多くの事業体が参入するには、もっと儲かる仕組みにしないと無理となるが、それは現在の福祉の制度では困難だろう。
可能性としては、JR東日本や京浜急行がやっている鉄道駅付近の保育園で、これは利用者にとっても非常に便利だと思うのだが。
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