田中角栄について

長い間、田中角栄は嫌いだった。だが、立花隆の『田中真紀子研究』を読んで考えが変わった。
角栄は、義理と人情に生きる極めて「日本的な」親分で、これには大変感心し、好きになった。
彼の娘・田中真紀子議員は、そうした日本的なものが嫌いで、否定しているらしい。
それが、典型的に出たのが、彼が脳梗塞で倒れ入院したときのことである。

このとき、田中真紀子は早坂茂三ら側近を首にし、角栄を早期に退院させてしまう。
表向きの理由は、「自宅療養のため」だったが、本当は金がかかり過ぎるからだったようだ。
見舞い客に出す寿司の出前だけで、月200万円を越えたというのだからすごい。早坂らが勝手にやっていたらしい。
真紀子から見れば、早坂たちは田中家の財産を食い物にしている、と見えたのだろう。
だが、角栄の権力の元は、こうした金のばら撒きである。
角栄は子分には猛烈に金を配ったようだ。だから、子分も忠節を尽くしたのである。
こうしたウェットな、極めて日本的な人間関係は、正規の大学教育を受け、米国留学も経験した真紀子には到底理解しがたいものだろう。
そこで、忠臣たちを切ったというわけである。

晩年、角栄が倒れてから後、人前で彼はいつも泣いていた。
自分が倒れ権力がなくなったことが悲しいから泣いていたのではない。
あれは、脳梗塞の後遺症の「感情失禁」である。自分で感情をコントロールできなくなるのだ。彼の場合は泣いていたが、逆のケースもある。
常に怒っている。あるいは、ほんの少しのことで切れてしまう、といった人間もいるそうだ。
いずれにしても、田中真紀子の非情さは、ある面小泉純一郎にも共通するものがある。それは、小泉首相も若いとき英国に行ったことがある性だと私は思うが。

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