大森キネカの「三島由紀夫映画祭」の4本目。1965年に東宝。脚本井手俊郎、監督木下亮。主演岸田今日子、山崎務。音楽は大映等で、師匠伊福部昭なみの重厚な作品(『夜の素顔』『白い巨塔』『陸軍中野学校・開戦前夜』など)が多い池野成で、この映画には合っていない。
物語は、元男爵家の未亡人岸田今日子がゲイバーの美青年山崎務を愛し、彼を通じて愛の駆引きを学ぶ。
「肉体の学校」とは羊頭狗肉で、せいぜい「愛の学校」程度。時代がまだ、ポルノ以前なので、きわめて微温的な性表現。日活ロマン・ポルノでは、この手の話を多く見た気がする。その意味では、先駆的な作品。
木下亮監督は、デビュー作『男嫌い』を見たことがあり、テクニックばかりの凡作で呆れたが、これはじっくりと撮った作品で相当に良い。この人は演劇をかなり知っている、と言う気がした。
三島の原作の性もあるが、全体にきわめてお芝居、お芝居しているが、それが上手く行っている。
話は、レイモン・ラディゲ以来の愛についての「ビルドゥグス・ロマン・遍歴小説」で、それをゲイバーの両刀使いの青年(山崎が到底21歳の大学生には見えないが)にしたあたりの皮肉が、実に三島由紀夫らしい。
滝沢秀明と松島菜々子あたりで、リメークできるのではないか、と思った。