夕方、フィルム・センターで成瀬巳喜男の『銀座化粧』を見た後、夜は録画しておいた篠田正浩の『暗殺』を見る。
『銀座化粧』は、銀座のバーの女給田中絹代の話で、築地に住んでいるが、銀座の様子が今と全く違う。平屋、せいぜい二階建ての木造家屋ばかり。戦前の地方都市の感じ。
冒頭で、一度見ていることに気づいた。音楽は、戦前は東宝で、戦後は東映(マキノ雅弘など時代劇が多い)で活躍した鈴木静一。『姿三四郎』に出てきた叙情的な旋律が流れる。
主演が田中絹代なので、予定調和的、奇麗事であり、高峰秀子のような辛らつさを欠く成瀬作品である。
この映画が作られた昭和26年の3年後、経済白書は有名な「もはや戦後ではない」と書くが、ここは「まだ戦前である」。
『暗殺』は、幕末の風雲児清河八郎(丹波哲郎)を描くもので、彼を暗殺した佐々木只三郎(木村功)の目で語られる。山田信夫得意の回想形式のシナリオ。
この作品は、篠田正浩監督作品では『乾いた花』と並び最高作だと思う。
60年安保闘争敗北後の、思想的混迷状況の暗喩と絢爛たるチャンバラ劇が上手くミックスされている。
清河は言う、「生きたいように生きる。他に何がある?」
清河の高弟に、世界の蜷川幸雄。蜷川は、自分を「だめな役者だった」とよく書いているが、役者時代もかなり活躍している。ここでも一番良い役。
他に、島津久光が武智鉄二。早川保も最近見ないが、どうしているのかね。
篠田も、音楽武満徹、撮影小杉正雄の松竹時代が一番良かったと思う。
松竹京都撮影所が閉鎖される前の最後の作品。
同撮影所は、その後子会社・京都映画になり、『必殺シリーズ』等のテレビ映画で食つないだ後、現在は松竹京都撮影所として再生されたのは、松竹大船が消滅したのに比べて大変皮肉である。
清河に斬られた目明しの首が、笑っているブラック・ユーモア。
コメント
「松竹京都映画」について
京都映画(松竹京都映画)ですが、あそこの変遷はややこしいんですわ。
自分の下手な説明よりもこのページをご覧くださいませ。ちょっとこんがらがる部分がある。
「松竹京都映画撮影所」
http://www.arc.ritsumei.ac.jp/cinema/aruke/aruke15.html
「松竹下加茂撮影所」
http://www.arc.ritsumei.ac.jp/cinema/aruke/aruke16.html