『バンコクナイツ』

1980年代、バンコクの女性の5%は売春婦だと言われた。私は、タイに行ったことはないので、真偽のほどはわからない。

ただ、この3時間もの映画を見ると、それも嘘ではないかなと思えて来る。

バンコクにいる主人公のオザワ(富田克也監督自身が演じている)は、元自衛隊員でカンボジアPKOでこの地にきて、女性に依存したり、いろいろなことをしてその日暮らしの生活を享受しているが、昔の恋人ラックに再会する。

この辺の始りの人間関係は少々わかりにくいが、オザワが先輩に頼まれて、不動産調査でカンボジア、ラオスに行くところから「ロード・ムービー」になっていき、俄然面白くなってくる。

中でも、カンボジアの米軍に爆撃された草原の丘が連なる情景が特に面白い。

ベトナム戦争時、米軍は南ベトナム解放戦線軍を支援する北ベトナムによる軍事的支援ルートを叩くため、カンボジア領内もしばしば爆撃した。

それが丘の元だが、数十年を経て非常に不思議な情景を作り出している。

また、フランス人たちがいて、インドシナ戦争時代からいるとのことで、『地獄の黙示録』のようだが、本当かねと思うが、本当のことらしい。

作品は、長時間だが、決して退屈することないのは、映像と音楽が良いからである。

音楽は、タイの伝統音楽であるモーラムで、これは日本で言えば、浪花節や説教節のような語り物である。

私が実際に見たのは、1992年のウォーマッド横浜と連携して渋谷で行われた「東南アジア祭」の時に来た、おじいさんとおばさんのモーラムだったが、原田尊志さんの話では、有名な方だったようだ。

その時感じたのは、男女二人の掛け合いで語られる物語は、われわれには理解できないが、時には猥褻な内容もあると思われる実にユーモラスな音楽だった。

最近でも日本でモーラムの公演があったそうだが、残念ながら私は見ていない。

この映画ゆったりとした感じは、タイの文化を象徴しているように私には感じられた。

題名の「バンコクナイツ」は、NIGHTではなく、NITESと普通東南アジアでは表記されていることに由縁しているとこと。

当分、DVDは出さないとのことなので、ぜひ見に行ってほしいと思う。

映画に行くのは面倒という方は、渋谷のCDショップの「エルスール」にはサウンドトラックのCDもあるので、ご利用を。私は一銭ももらっていないが宣伝しておく。因みに私はもちろん買ってきた。

横浜黄金町・シネマベティ

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